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闇にうつろふ  作者: 五月蒼井
壱、
14/35

追跡者2




「なるほど、この神社を突っ切っていたから、あいつはここであんたを見失ってたんだな」


力ある神が祀られている社には、邪な思いを抱く妖は入れない。早苗が帰りに通っていたのは、この辺りの地域では参拝者の多い神社だった。


「もっと簡単に見つかると思ったんだけどな。水無月がいるから警戒しちゃったかな」


「それは否定できないな」


炎獅子の力は蛇又には及ばないが、とても強い。そこいらの脆弱な妖は恐怖心から近づくこともできないだろう。

ほぼ毎日のように気配を感じてたというので、もっとすぐに悪婆を見つけれると思っていた。


「とりあえず、暗くなってきたし今日は帰ろうか」


妖を探知することは可能だが、今日は道具を持っていないし、燈中は探索はあまり得意ではなかった。探知関連の術は、姉である李左が最も得意とするところだ。


「このお札を渡しとくね。藤岡さん家は一軒家?家の周りに塀はある?塀の外側にポストはある?あるんだったら、郵便ポストの中の見えないとこに張っておいて」


バーッと質問を繰り出し早苗が頷くのを確認しながら、燈中はカバンからしわの少ない比較的きれいな札を取り出した。制服のポケットにもくしゃくしゃの札が数枚入っていたが、それを同級生に渡すほど、燈中も神経が太くはない。


「えっと…郵便ポストでいいの?」


「塀に直接張ってもいいけど、家族が見たら悪戯だと思って剥がしちゃうでしょ?」


正直なところ、家の外であれば張る場所は特に指定しない。ただ、雨風に晒されず、あまり他者の目につかないところがよかっただけだ。


「明日と明後日はちょっと用事があって学校休むから一緒に帰れないんだけど…家へ帰るときは寄り道して、必ずあの神社を通ってね」


「わかった」


「もし明々後日にまた学校で会うまでに何か困ったことがあったら、うちに電話して。私はいないけど、電話に出た人に何があったか話してくれればいいから」


自宅の電話番号を書いたノートの切れ端を渡せば、早苗は心底安堵したようだった。学校帰りの時間なら母か縁鬼が電話に出るだろう。聡い彼がいればすぐに最善の対処をしてくれるはずだ。


「ありがとう――丑寅(うしとら)さん」


「じゃあね」


早苗に背を向けた燈中は、そろそろ自分にも専用のスマートフォンを買ってもらうように母に頼まねば、と心底思った。買ったら買ったで、毎日のように優璃から連絡が来そうで少し面倒だなとも思いながら。



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