番外編 『Nightmare』
夢をみた。
血の臭いが、硝煙の臭いが、死臭が、懐かしい臭いのする夢をみた。
何も思うことなく、何も考えることなく、ただ刀を振り下ろすだけの懐かしくて、怖くて、泣きたかった夢をみた。
選ばれたのは何故私なのか。
そんなこと、わかりきっていたのだから。
誰かが指さして言った。
「お前は何を思う」
人間は愚かだ、と私は思う。
誰かが声を荒らげて言った。
「お前に心はないのか」
いまさら知れたことを、私は刀を振り下ろす。
誰かが……、誰か?
目の前にいるのはトモダチ、友達……?
「君は優しい」
月の下で君は言った。
「やっぱり君は強いなぁ!」
戦友は背中ごしに言った。
「僕のために泣かないで」
冷たくなった親友は血のついた手で。
恋をしていたわけではない。
ただ、救われたのだ。
私の目の前にいきなり現れた親友は、私を救い、いきなり消えた。
親友は、言った。
「君を救いたい」
私は救われてしまったのだ。
あんな奴に救われて、全く不満だけど。
不満だけれども、私は初めてだったのだ。
初めての友達だったのだ。
友達だったのに。
私はあれから独りぼっちになった。
仲間に囲まれたけれど、独りぼっちになってしまった。
悪夢をみた。
いつもみる悪夢は、あいつによって殺された友達をただ見ることしかできない自分だ。
私は、自分が許せない。
ただ泣くことしか出来なかった自分が許せない。
そして、そんな友達は自分のせいで、自分のある理由のせいで死んだのだ。
きっと恨んで死んだだろう。
そんな親友は最後に呪いを残して死んだ。
あの5年前の現実は、私の悪夢となって焼きついた。