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ワールド・アナイアレンション  作者: cier
第1章『七つの大罪』
2/4

『入隊』

2.『入隊』


私的にはもうさっさと暗部に到着し、天界のことについて皆さんに聞いて周り、勉強したいという一心なのだが……。

この目を輝かせ、人におごってもらいながら食べ歩きをする馬鹿な親友を置いてさっさと暗部に行きたいというのが私の思いである。

「これすっごいうまいですね!!」

とかなんとか叫びながら何か得体のしれない串焼きを食べている。

インセットさんは快くお金を払っているがさすがは男というか、2人してあれこれ食べながら暗部に向かっている。

「零も食べてみろよ!これ案外いけるぜ!」

そう差し出されたのは、深緑の何か、動物だったのかなんなのかわからないものが串焼きにして焼かれたもの。

焼かれたのにもかかわらず時々ピチピチとうねる。

思わず顔がひきつる。

これでもいちお女なのでこうゆうものは得意ではない。

「遠慮しとく…」

バーナーはつまらんと言った表情で串焼きをガツガツ食べる。

「バーナーこれは俺のオススメなんだが……」

インセットさんは両手いっぱいに食べ物を買ってきてバーナーに勧める。

これは先が長くなりそうだと、心で小さくため息をつく私であった。





「食った食った〜いやぁ天界は新しいものだらけで飽きることがないなぁ零!」

「私はあなたが子供で馬鹿な大食いだって思い知らされたわバーナー」

何かあったのか零は機嫌が良くないらしい、あの間になにかあったのだろうか。

俺はもちろん知るよしもない。

今それを聞いたら拳か蹴りが飛んでくるであろう、と考えさせるような目で俺を睨んでいるからである。

……やはり零も食べたかったのだろうか。

せっかくインセットさんがおごってくれたご馳走を残すわけにもいかないし……食べ物を粗末にするのはいけないと思うのだ。

そんなことしか浮かばない俺は正真正銘の馬鹿である。

ていうかさっきから零は周りをキョロキョロしている。

「インセットさん」

「なんだ?もうすぐ着くころだが」

「なんだがこの道さっきより…」

零のように辺りを見回す。

さっきより人が増えてきたというか……なんか賑やか?いやさっきも賑やかだったけど。

インセットさんもそれに気づき、あたりを見回すとなにか思い出したような顔をした。

そうえば、と口を開いて。

「おっとこれは我が国のイケメン皇子様がお通りになりますなぁ」

そうニヤニヤしながらインセットさんは道の端によるので俺たちも端による。

そうこうしてると道の向こうのほうに軍服をきて武装した集団がこちらにむかってくる。

その後ろに馬車のような形をした馬なしの箱がふわふわと浮き、それが3個ほど並んでいる。

「インセットさん、これ何ですか?パレードか何かですか?」

「まぁ、あながち間違ってないな。そうだな〜、天界は昔下界と大喧嘩してなぁ、それまで続いてた友好関係がそこでぷつりときれちまったんで今になって関係を戻せないかと天界は頑張っているのさ」

「それで、この国の代表直々に下界を訪問する、というわけですね」

「そう!まぁ代表は皇子なんだがな?天界は下界と今もちょくちょく喧嘩してるんでここいらで和平を結びたいんだなぁ、まぁ天界と喧嘩したい所なんてないだろうがな〜」

そう笑いながら俺の肩をぽんぽん叩く。

道の端を移動しながら話を続ける。

「天界は世界中から強い者が集まる、しかももともと天使っていうのは神の使いだ、神を守るためにある。まぁだから強くなくちゃいけないんだ、だから天界には国立戦闘学校ってとこに通う義務があるんだ、まぁ下界でいう学校だよな、勉強が全部体育みたいなもんだ」

呆れた顔で人ごみをよけながら歩いていく。

天界も大変なんだな…。

すると、ちょうど一つ目のふわふわ浮く乗り物がゆっくりと横を通っていく。

中に乗る人たちはみな貴族のような格好をしており、礼装の人もいた。

みなワインを片手に外には目もくれず大声で笑っている。

見ているこっちが嫌になる。

あの中に例の皇子もいるのか……なんだが嫌だな。

そう、二つ目のほうに向く。

そこには笑顔で外に手を振る白いマフラーをした若い男がいた。

白髪で吸い込まれるような黒い目、左目の周りに黒い模様がある綺麗な男の人。

さっきの人たちと違い、ゆったりとした庶民的な服を着ている。

赤い線がアクセントの黒いタンクトップに半袖の白いパーカー、黒いパンツに白いベルト。

下界の服屋さんでも買えそうな服である。

「あいつがこの国の皇子、ウル家のレイト第二皇子、別名太陽神アポロンだ」

「太陽神……」

「なかなかにイケメン君だろう?」

「そっそうですね」

その例の皇子様は俺に気づいたのか手を振ってくれた、と同時に驚き、呆れて乗り物の動きをとめさせた。

え?俺なんかしたの?やらかしたのか?呆れさせるようなことしたか?確かに、確かにガン見してましたけどそれに呆れたんですか?

例の皇子は乗り物から降りるとこちらにスタスタと歩いてくる。

近づくにつれさっきはたくさんいたはずの人たちは俺たちを避けるように囲んでいく。

ついに皇子は俺たちの前に来て、手が届く距離である。

「おいインセットっ!……探したぞコラ……予定をすっぽかしてなにしてんだおまえ……!!」

と、俺ではなく隣の方に話しかけた。

インセットさんはニヤニヤと待ってましたと言わんばかりに笑いながら皇子の前へとでる。

「いやーそれが今思い出してよ〜、今すぐについて行ってあげたい気持ちはやまやまなんだけど〜こいつらを暗部に送り届けるって約束なんだよなぁ」

「暗部だぁ?」

皇子は俺と零を交互にみる。

「そうかあいつんとこの例のな……天界へようこそ、俺はレイトだこれからよろしく」

少し考えてから笑顔になり、さしのべられた手を俺たちは名前をいいながら握る。

「是非天界を案内したいところだが残念ながら俺はこれから予定が入っててな、長い間留守なんだ。そのインセットもこれから一緒に行くはずなんだが」

そういってインセットさんを睨みつける。

怒りの炎がメラメラと背後にみえる。

「予定をすっぽかしたのは悪かったけどよ、約束なんでさー」

「…………10分だけだかんな」

さっきまで睨みつけていた顔は呆れた、と目を隠してため息をつく。

はたして俺は思っているのだが、この2人はどうゆう関係?皇子様と軍人がすごい仲がいいんだが。

それを察したように指をさしながら心底嫌な顔をして、

「友達だ、友達。ガキんころからの友達で、残念なことに暗部の隊長とも友達だ」

そう皇子様がインセットさんをチラチラみながら答える。

「腐れ縁ってやつだな」

「まったく最悪だな」

2人は俺たちの前で軽く口論を3分程したあとインセットさんが皇子様の背中をバンバン叩いたあとバチンッとインセットさんの背中を一発叩く。

この人不思議な人だな〜、と思わせる。

失礼だがインセットさんはおそらく平民、対してレイトさんはこの国の皇子様。

上下関係にあるはずなのに、レイトさんはそれが嫌いであるように見えた。

そんなレイトさんは国から人気ありそうだなぁ〜、なんて呑気に思う。

「いいか!絶対!終わったら!来る!いいなわかったな!絶対だかんな!」

レイトさんは乗り物の扉に手をかけてギリギリまでインセットさんに叩き込んでいた。

「わかった、わかった 行きますよ〜」

そうまったく分かってなさそうな顔で手をふる。

レイトさんは不安な顔で乗り物に乗り込み何やら合図を中でし、乗り物は先ほどのスピードより早く進んでいった。

「よし、んじゃお待ちかねの暗部に行くとしますか!」

「はい!インセットさんの為にも早くいきましょう!」

「それはどういう意味だバーナー………」






目の前には洋風の立派な白い建物。

黒に青い六芒星が描かれている旗が建物の屋上ではためいている。

俺はその旗がはためくのをただ見ていた。

道中色々あった……天界に行く前、零の荷造りの手伝い、いやバック1個分をやらされた。最低限必要な物を入れたキャリー、零に軽すぎて心配だと部屋をあさられた。いやそんなことはまだまだ平気である。

天界についてから水分の確保に困った、いや困ったのは俺だけだ。

あの炎天下の中歩き続け、俺の分の水筒1個分しかない水分を零によって半分以上は奪われた。

森で遭遇したやたらデカイ蛇を素手で殴り倒した時は「次やらかしたら俺もこうなる」と本気で思ったものだ。

インセットさんと出会って本当に良かった、俺が助かった。

あぁ………いや、本当に。

「ながかったなぁ……!」

涙がでてきた。

ありがとうインセットさん、ありがとう!!

「さて、バーナー、零。ここでお別れだ。まぁここに入るなら会えないことはないだろうが長らくは会えんだろう。あとはまぁ中にいる奴らに聞いてくれ。」

「はい。ここまでの案内本当にありがとうございましたインセットさん、おかげで予定より早く到着出来ました。」

「本当にありがとうございますインセットさん!是非いや絶対また会いましょうね!」

俺はインセットさんの手を握り勢いよく振る。

「それじゃあお元気で!」

そう言って背を向け、キャリーを引っ張って歩く。

何泣いてんのよ、何でもいいだろー、なんて会話をして門をくぐる時。


「1つ、言い忘れたバーナー。天界は弱者が先に死ぬ。強者によってな。せいぜい死なないように頑張れよ。」

インセットさんの笑うような冷たい声が風によってか、それとも勘違いか、やけに近くで聞こえたものだったので後ろを向いてみたものの、そこには誰もいないし何もない、ただ陽炎が揺らめくばかりで馬鹿にされているように感じた。

何かが引っかかるが俺は向き直って零の後を追う。

「何かあったの?」

「いや……何もなかったんだけど〜まぁいいかっ」

どうせすぐ忘れるだろう。

いや、本当に忘れそうになるとは思わなかったのだが。

「馬鹿グラディウス!!そっちに人!人いるから!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!ごめんなさぁぁぁあい!!!」

「バーナー後ろ!!あぶっ」

何だ何だ騒がしいなぁ、と後ろを向くとくるくると高速回転する剣の鞘だろうか、俺に向かって飛んでくるではないか。

「いやぁ………そんなことって…」

ゴンッと俺の頭にクリティカルヒット。

当たった鞘は後ろに吹っ飛び、俺は衝撃でバタり、と倒れる。

「君大丈夫っ!?ってこの子今日入隊予定の子じゃないか!!」

走って俺の隣に片膝をついた人と水色の髪が視界にうつる。

その人は俺の背中に手を回して、俺をゆっくりと座らせてくれた。

「すまないっ私の不注意で君を酷い目に合わせてしまった、許してくれ」

片膝をついた状態でその人は頭を下げる。

「っ〜〜〜、あははっいやその……ぐわんぐわんしますけど、だっ大丈夫なんで……顔上げてください」

「いつかこの無礼を君に倍の礼として返せるよう努力することを誓おう」

そう言って、その人は水色の髪をなびかせて顔を上げる。

綺麗な女の人だった。顔は凛々しく、綺麗な黄色い目だった。なんだ?天界は美男美女に溢れてるのか?悲しくなってきた。

美女は右手を胸に当て、軽く頭を下げて立ち上がる。まさに美人騎士。

「運がなかったな少年!それじゃ後は任せたぞグラディウス!」

人が横を通り過ぎ、そのまま羽を広げて後方に強い風をおこしては凄い速さで飛んでいった。

「あっこら!任務内容ぐらい話して行ってくださぁーい!!」

その後ろ姿を見て、叫ぶ美女。

立派な建物の2階からは多くの人が窓から身を乗り出している。

「おうおう今日もグラディウスの負けだー104対52ってところだな〜」

「グラディウスもこりねぇな〜」

「そろそろこれ見るの日課じゃね?」

なんて会話がワイワイ飛んでいる。

そろそろ頭の痛みも引いてきたのでゆっくりと立ち上がる。

どうやらこの人はグラディウス、という名前らしい。一応確認しよう。

「あの……グラディウス…さん?」

その人は、くるんとコチラを向いて腰に手を当てる。

「あぁ、私がグラディウスだ、グラディウス=フォーンスという。暗部の副隊長を務めさせてもらっている。こちらも確認させてもらうが君たちは入隊予定のバーナーと零、で合ってるだろうか」

なんと、まさかの副隊長さん……だと……。

となると俺の上司&先輩になるわけだ。

「はい、本日より入隊することになりましたバーナーと零です。まだ未熟ですがよろしくお願い致します!」

俺は足を揃え、敬礼をビシッとする。

後ろで零も敬礼をする。

「よろしくお願い致します」

すると窓からは先ほどよりも人が多く身を乗り出していた。

その中の1人がなんと窓から飛びおり、音もなく着地した。

「なんだよグラディウスー!新人かー!?」

スタスタと歩いてきてはグラディウスさんにキラキラとした笑顔で話す。

「そうだティア、お前は皇子殿の所にいたから知らんだろう。資料は置いといたのだが」

顎に手を当て、少し考えたものもすぐに笑顔に戻る。

「んー?そうだったか?まぁいや!よう新人!歓迎するぜ!俺は第2班班長をやってるティアだ 実は俺も人間でな、ここは天界だろう?何かと不便があるだろうから、同じ人間として手を貸すぞ」

「それは心強いです!ありがとうございます」

黒髪で青い目をした少し高い身長の青年はティア、と名乗った。

まだ下界の常識が抜けぬのかティアさんの腰に細剣を下げている、それにどうしても目がいってしまう。

ティアさんはそれに気づいたのか、笑顔で細剣の柄に手をおく。

「これか?俺の相棒の剣だ!切れ味最高だぜ〜っなんたって白竜の鱗削って作ったからな〜」

なんたるカミングアウト。

白竜の鱗?この時代にそんな生き物存在したのか、いや、天界だからありえるかもしんない……。

「よろしくな〜!!」

窓から多くの人が一緒に声を合わせて叫んでいる。

グラディウスさんが両手を腰に手をあて、窓に向かって叫ぶ。

「お前らほら訓練に戻れー!!あとで紹介するからー!!」

へいへーい、わかったよ〜、しょうがねぇな〜、なんて窓から聞こえてくる。

「今でもいいんじゃねぇのグラディウス?」

「新人を案内しないといけないんだよ!お前も仕事しろティア!」

「了解、副隊長殿〜っと」

わざとらしく深々と礼をして、スタスタと建物に入っていく。

グラディウスさんはため息をついては笑顔になり、落ちている鞘を拾う。

「すまないな新人、うちはいつもこうでな。うるさくて仕方ないんだ、これから毎日そうなるが許してくれ、あいつらも悪気はないんだ」

思わず苦笑いしてしまう。

けれど悪くはない。

こんなに賑やかなのは兄さんと一緒にいた時以来だ。

兄さんと一緒にボール遊びで窓を壊して、こっぴどく怒られた時は兄さんと笑ったものだ。

たかが5年前だというのに懐かしい。

「良かったね、バーナー」

零が肩に手を置いてすぐに離す。

もしかして泣きそうな顔をしていたのかもしれない。

零なりの気づかいだと受け取っておこう、なんだかんだいってあいつも優しいのだ。

もちろんグラディウスさんは頭にはてなを沢山浮かべていたのだが。

「まぁ、とりあえずついてきてくれ。やる事は沢山あるからな。」

「はい!!」

2人同時に返事をする。

「いい返事だ、バーナー、零。まず最初に暗部の敷地内を案内しよう。この前の白い建物は暗部の本館だ、基本的に会議やこれからお前らも所属することになる班の部屋、食堂、副隊長室、隊長室、重要な所が集まっている。あぁ、荷物はそこに置いといてもらってかまわん、誰かに運ばせよう」

副隊長はスタスタと先ほど鞘が飛んできた方向に歩いていく。

本当に置いといていいのだろうか…焦っているうちに副隊長がドンドン奥にいってしまう。

零は躊躇いなくキャリーを置いては副隊長の後をついていく。

「………まぁ、いっか」

キャリーを置いて、零のあとを駆け足で追いかけた。









「とまぁこんなとこだな」

「敷地内……とても広いんですね…」

あの真面目な零が弱音を吐きそうな顔で副隊長に言った。

そう、最初は初めて訪れた観光地をワイワイと歩いていたが、段々と足が疲れてきて気分がさがってくるような感覚だ。

あまりにも敷地内が広すぎた、予想してたのは少し大きな学校ぐらいの敷地だと思っていた。

だが実際はその学校が4個ははいるのではないかと思ったほどだ。

広すぎたので案内は青い夏らしい空がひろがる昼だったはずだ、それが今は満天の星空がひろがる夜である。

今は敷地内で1番隅っこに立っている建物の目の前に居る。

建物からは賑やかな音が聞こえ明るい光が漏れ出ている。

副隊長によるとここは隊員専用の無料で借りれる寮らしい。

天界を初めて訪れた身なもので無一文、天界に居るはずの兄の居場所もわからないので住む場所に困っていた所だ。

なので俺たちはここの1室を2人で借りることにしたのだ。

部屋には最低限の家具があるらしいのだがそれは部屋にいってからのお楽しみとしよう。

荷物は借りることが決まった時に副隊長が部屋に運んでくれたらしいので感謝しなければ。

「バーナー、零、今日はもう休んだ方がいい。まだまだ説明しなくてはいけないことが沢山あるからな、それは明日に回すとしてだな……」

副隊長は困ったような顔をして腰に手をあて、ため息をついた。

「何かあるんですか?」

「あぁ……我が隊の隊長、あの時鞘を私が飛ばしてバーナーに当たったあと人が翼を広げて凄い勢いで飛んでいっただろう?あの人が我が隊の隊長なんだ……全く困った人だ、任務なのか、それともプライベートなのかも伝えず1人でどっかに行ってしまうから色々困るんだ。例えば今とかね」

「隊長は明日には帰って来るのでしょうか?私たちは隊長に挨拶をしたいのですが」

「それなら大丈夫だろう、勝手にどこか行った後でも必ず毎朝会ってるからな」

「まぁとりあえず部屋に案内しよう」

ついてきてくれ、と言われ、寮の大きな扉をあけ、賑やかな集会場の横を通り過ぎ、2階分の階段をのぼりきって右に曲がった、1番奥の部屋のドアの前に案内された。

ドアの上には黒い板に金色の数字で305、と書かれている。

「ここを自由に使ってくれ、中は小さめのリビングと2部屋、キッチンとトイレ、風呂もあるからあとは好きに。それとこれを」

副隊長はズボンのポケットをゴソゴソと手を突っ込み、金色の鍵を俺に渡した。

「もう夜も遅いことだし早く寝た方がいいぞ ここの生活は凄いからな」

「はい、そのようです。」

そう苦笑いをして答える。

俺は受け取った鍵をドアの鍵穴に差し込んで回すと、カチャっと音がたちドアノブに手をかける。

「それじゃあ二人共、いい夢を」

「おやすみなさい副隊長」

俺は零が部屋に入ったことを確認してドアをしめる。

零は靴を脱ぐと暗い部屋を手探りで明かりをつける。

ポウっ、と明かりが部屋を優しく照らした。

目の前には広い空間の真ん中に木製の机に椅子が2つ、ということはここがリビングか。

左右にドアがある、きっとこれが2つの部屋。言われた通りであった。

「結構広いね、バーナー。あとそこに荷物置いてあるよ」

零はキャリーを持ち上げてリビングに向かって歩く。

俺は靴を脱ぎ、荷物を持ってリビングにぺたぺたと歩く。

「さて、副隊長に言われた通り今日は疲れたから休みましょうバーナー。」

「そうだな〜、ここに到着できたのは本当にインセットさんのおかげだな」

「そうね、また会えると言っていたし、その時にお礼を言わなくちゃ」

「あぁ、その時にゃーびっくりする程強くなってるかね?」

「会えるのが凄い先のことみたいに聞こえるよ、それより私は左の部屋を使わせてもらうわね」

さらっと、決められ零はキャリーを持って左のドアに手をかける。

「まてまてまて、零、俺に拒否権というものはないのか?俺もそっちがいいんだが」

いつもいつも、零にリードされていたが新しい環境になったことだしここで負けるわけにはいかないのだ。

「あらレディーファースト、よ、バーナー」

常識でしょう?なんて顔しながら零はドアをしめた。

俺のことなんか聞く耳もたず、という感じであった。

少し広く感じるリビング、そこに1人ポツンと置いてかれた。

「……………寝ますか……」

俺は強制的に右の部屋となったドアノブに手をおく。

部屋に入ると、月の光が窓から差し込み少し明るい、ベッドと棚、それから机だけか……。

俺は荷物を部屋の隅におく。

靴下をぽいっと投げ、ベッドに寝転がる。

横になると疲れが一気に溢れて眠気が襲う、うとうととしながら布団の中に入る。

やっと、やっと兄さんと同じこの地に立ったぞ。

兄さんが家をでてからは毎日毎日筋トレして、村の学校では1番の体力をつけたし、下界、まぁ人間が住む所は12歳から成人みたいなもんで、魔法を習うやつ、家業を継ぐやつ、色々いたが、俺は学校でてからというものの軍の学校に入って剣を学んで2年前、天界、存在すらしてるのかわからないような所、兄さんが居る所、謎だらけの地から急に交流を深める〜、とか何とかで、手練の人間を数人あちらの軍に配属するとかなんとか、そこらへんは覚えてない。

要するになんか若手で強い奴を天界の軍に入隊しませんか、的な話が舞い込んで来たのだ。

同年代の奴らはまず天界なんて存在しているのか、と疑い、天界は化物級の強い奴らがうじゃうじゃいて死ぬとか、いろんな訳で行きたがる奴がいなかったのは覚えてる。

けど、その中で俺は知っていた。

天界が存在することを、確かに天界は強い奴らが沢山いることも。

その中に兄さんがいることも知っていた。

だからその話をホームルームでされた瞬間、俺は手をあげて立ち上がり叫んだ。

「俺が行きます!!!」

俺と同じく、軍の学校に入っていた零は同じクラスで前にいて、頭を抱えて俺を見ていたなんて気にしなかった。

だが次の瞬間担任に、お前の成績じゃ無理、とピシャリと言われてクラスからドッと笑いがおきた。

その後の放課後、零と家路につきながら話した。

「あなたの成績じゃ無理よバーナー」

「でもよ〜俺はどうしても天界行きたいんだよ〜、こんなチャンス滅多にないからよ〜、」

「じゃあまず、成績をどうにかすることね」

「勉強はできねぇんだよな〜、剣の授業はオールA評価だぜ?天界は強さを求めてんだぞ!だったら勉強なんていいじゃないか……」

「全く……小さい頃か全然変わらないんだから」

「なっ!それは俺を馬鹿にしてるのか零!」

「違うわよ馬鹿」

「ゔっ」

「……しょうがない、私も行くわ天界に」

「………はぁぁあ!?マジで言ってんの!?」

「当たり前でしょ、こんな馬鹿天界に放り込んだら1日で死ぬわ、一応親友がそんな目に合うのは回避したいものね、それと、私も興味があるの、天界の歴史に」

「ナルホド……じゃあ俺たちまた一緒だな!!」

「そうね、あなたの成績次第だけれども」

「ゔっ……!」

俺はその後必死こいて勉強してなんとか成績を上げ、天界にいく権利をもらった。

その時は嬉しすぎて、ぴょんぴょん飛び跳ねたものだ。

「いやぁマジで、懐かしいなぁ……あの時は零がスパルタで死ぬかと思ったしなぁ」

そう、明日からは夢への第一歩。

まずは強くならなければ、そして兄さんを探して、兄さんと一緒に仕事をするのだ。

だから今日は寝ないとなぁ……。

大きなあくびをついて布団を深くかぶる。

明日からは………。

そんな嬉しい思いを胸に膨らませて、俺は目を閉じた。












「………むぅ〜、せっかく誕生日にもらったのに〜……もうダメだなこれは」









壊れたオルゴールのような音楽がカタカタと響く音に、目を覚ます。

目をこすって起き上がり、窓を見ると、空は紫や赤が広がり、小鳥が鳴いてる。

少し冷えた床に裸足でぺたぺたと歩いてドアを開ける。

リビングには誰もいなくて、窓から差し込む光が床を照らして明るい。零は………まだ寝ているようだ。

起こすのもなんだが気がひけるし、もう少ししたら起きるだろう。

「…………この音………」

先程から、壊れたオルゴールのような音がどこからか聞こえてくる。

この曲は、なんだが聞き覚えがあったのだが何処で聞いたのだったか…。

とりあえず、音がする方へ足を運ぶ。

キッチンの方からだ。

「………ベランダ……あったのか」

この奥から聞こえてくる、俺はドアノブをひねってあける。

俺は裸足で外にでる。

外は森が広がるばかりで、特にこれといったものはなかったのだが…。

「そんな……」

いきなり聞こえた声に反応して、右を見る。

少女がいた。

正確には、ベランダの柵部分に腰かけ、外に足をだしている、銀髪で、耳の後ろでツインテール、右目を黒い布で隠した少女がいた。

また美女か……天界ヤバすぎる。

でも、なんだかその人はこちらをずっと見ている。

どんな表情をしているのかは、太陽の優しい光でよく見えない。

けれど、その人は確かに、風で消えてしまいそうな声で呟いた。

『レーディック』

俺の名前はバーナー、人違いですよ、そう声をかけようと思ったけど先にあちらが口を開く。

「お前、入隊予定の新人か?」

「あっえっと………はい」

「そうか……そうだよな」

その人はそれだけ言って、下を向く。

壊れたオルゴールのような音楽がする。

少女の手に収まっているオルゴールからのようだ。

木箱の中の木彫りの少女がカタカタと回っているのをただ、その人は見ていた。

「仲間は自分の体だと思って死ぬ気で守れ、仲間は家族だ、仲間を見捨てるな」

「え」

少女の力強い赤い瞳がなびく前髪から俺を見据える。

「暗部のルールだ、新人」

少女はオルゴールを片手で持って、柵の上に立ち上がる。

「私は隊長のアモル=テラスだ、これからよろしく頼むぞ新人」

彼女はそう、イタズラに微笑んだ。

どうもcierです。

2話投稿に時間がかかってしまったことを最初に謝らせていただきます。

すいません。

執筆スピードは遅いですが次話もみてくださると嬉しいです。

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