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ワールド・アナイアレンション  作者: cier
第1章『七つの大罪』
1/4

『天界』

話をしよう。



最初に二つの生命が生まれた。

次に天界という神たちが住まう場所が生まれ、同時に神たちが生まれた。

その次に魔界と悪魔が生まれ、さらに下界、動植物、そして最後に人間が生まれた。

この天界、魔界、下界。

3つの場所を合わせて私たちは『世界』、そう呼んだ。

まるでおとぎ話のようだ。

きっと違う『世界』では神なんざ居なくてきっと悪魔も居ない、人間が『世界』を統制しているのだろう。

『魔法』もなくて『戦争』も滅多にない。

この『世界』と比べればきっと平和なのだろう。

ならば、この『世界』はどこで何を間違えたのだろうか。



話をしよう。

それは決して強いわけでもない、何か飛び抜けた才能があるわけでもない普通の『人間』が世界を救うどこにでもありそうな勇者の話を。




0、『夢』





小さい頃俺はヒーローになりたかった……なんて、男の子なら1度は思うありがちな夢だ。

もちろんそんな夢は叶うわけなくて、毎日近所の友達と『ヒーローごっこ』と言ってパーカーを羽織ってマントに見立てたり、木の枝で武器の代わりにし、悪役とヒーローをみんなで交代しながらはしゃいだものだ。

だけど時間というのは流れるもので辺りが暗くなると、1人、また1人と友達は帰っていく。

気づいたら俺は1人で、なんだかこんな格好をしてあんな遊びをしていたことが馬鹿らしく思えて家に急いだ。

でもこの『世界』にヒーローがいないわけじゃない。

実際、俺の家にはヒーローではないけれど勇者がいた。

勇者………はいいすぎかもしれない、正しくは『剣士』がいた。

カッコよくて、強いけれど少し心許ない、自慢の兄だ。

そんな兄は従兄弟なのだが家計が貧しくて仕方なくこちらに養子にきたというが、正直俺にはそんなことどうでもよかった。

『いつか兄さんのような立派な剣士になる』

いつしかそれが俺の夢になった。

そう、時間は流れるものだ。

兄さんはもっと強くなるために『天界』という所にいくらしい。

そこはこの『世界』には必要不可欠なエネルギーである『魔法』の発祥地で強い人たちがたくさん集まるのだと兄さんは言った。

『兄さん、俺も連れて行って!』

俺は家をでる直前の兄さんを引き止めて小さい子のように駄々をこねた。

兄さんは困った顔をして何かを考えこんで腰の長剣を俺に押しつけた。

『お前が強くなった時、天界にくるといい。僕は待ってるからゆっくりでいいよ、大丈夫さ!お前ならできる、だって僕の弟なんだから』

『じゃあ兄さん、俺も天界に行けるぐらい強くなって兄さんの所にぜったい行くから!』

『約束だぞ?バーナー』

穏やかに笑う兄さんはその時だけ妙に頼もしく見えた。




1、『天界』




「ふぅ…………まったく誰もいねぇな…」

赤煉瓦の道を歩いて15分ほどはたっただろうか。

人っ子1人いない状態で道の先には陽炎が揺れている。

ここは『天界』で今は夏真っ只中。汗は滝のように流れて止まらない。

こんな暑さなもんで人は誰も外に出ないのだろう、周りの森で鳴く蝉の声が一層暑さを引き立てる。

そこに後ろからガラガラとトランクキャリーをひく音が聞こえ期待して振り返るものの、期待ハズレで肩を落とす。

「そっちには誰かいた?バーナー」

黒髪をなびかせて歩いてきた女はトランクキャリーを止めると溜息を吐いた。

「零かぁ〜………期待して損しっだぁっ!?いだだだだっ!!」

「私でご・め・ん・な・さ・い・ね」

俺の頭を1発殴って髪をぐいぐい引っ張る。

パッと髪から手を離してトランクキャリーを持つとまたガラガラと赤煉瓦の道を歩き始めた。

「まったく………」

俺は髪を直して零の後を追うようにして斜め後ろを歩く。

零は赤煉瓦の道をまっすぐ見据えながらイキイキと話す。

「いいバーナー?人に出会ったらまずしっかり挨拶するの」

「それは俺でも出来るぞ零!馬鹿にしすぎだろお前!」

こいつは俺をなんだと思っているのやら。

しばしの沈黙のあとに再び零が口を開く。

「挨拶の後は何を話すかちゃんとわかってるのよね?」

「お前………ここまででそれ何回俺に聞いてるわけ?馬鹿にしすぎやしませんか?」

零はわざとらしく大きく溜息をついて顔だけをこちらに向ける。

「私から見たら貴方の頭は普通の人より劣っているから心配してあげてるのよバーナー」

「まてまてまてまて!お前、親しき仲にも礼儀ありって言葉しってる!?さすがにそれはいけない!いけないと思いますよ!?」

「はぁ……じゃあなんて言うか言ってみなさいよ」

「うぐっ……」

言葉がつまる、そんな俺を呆れ顔で見つめる零………。

ぬぐぐっ……俺だってそこまで馬鹿ではない!!

「えぇっと〜まず挨拶 それから名前を言って〜城下町に行きたいって言う……それで道を聞いたらありがとうを言う……どうだ!!」

俺はこちらに背を向け歩いている零に盛大のドヤ顔をかまし、「どうだ!すごいだろ!」とでも言わんばかりのニヤニヤした顔で見つめる。

「いや ドヤ顔されても困るし」

「せめてこっちをみて言って!?」

冷たくあしらう零に思わずつっこむ、くそっ小さい頃は可愛いとも思ったのに今となっては可愛げも優しさも何もねぇ!

「それよりバーナー」

「なんだよまだなんかあんの?」

ぶっきらぼうに答えると目の前でいきなり止まった零の背中に激突した。

「ごめんっ」

「大丈夫 それよりバーナー 前よ 前」

俺は言われるまま前をむく。

赤煉瓦の道の先、さきほどは終わりが見えなかったが今は見える。

その先の景色は周りの森によって見えないのがもどかしい。

俺は駆け足で地面を蹴る。

一歩一歩進む度に森はきえていき、その景色はすぐに姿を現した。

「うわぁあっ……と……」

抜けたちょっと先は崖になっていてブレーキをかける、あと少しで真っ逆さまだった。

だが危険なんて目の前の景色ですぐ吹っ飛んだ。

立派な城が遥か遠くに建ち、その周りを白い壁で赤い屋根の家々が建ち並ぶ。

ある者は空を飛び、ある者は商売をし、ある者は喧嘩をしている。

活気に満ち、遠いいのにもかかわらずここまで営みの声が聞こえてくるようだ。

「ここが………城下町………」

後から来た零も目を輝かせ、これからの生活に興奮しているようだ。

そんな俺たちを歓迎するかのように、風が横を吹き抜ける。

「行こう!!零!」

いまから始まる冒険にワクワクが隠せずキラキラとした目で振り返る。

そんな俺を呆れ顔で笑う零はトランクキャリーを引っ張って横に並ぶ。

「でもバーナー、崖で進めないわ。私達には羽がないからあそこまでいくのには〜…とりあえず崖に沿って回って見ましょう あそこで森が終わって町への道が伸びてるのが見えるから」

零の言う通りに辿ると確かに森が終わり、道が見える。

「そうだな、とりあえず行ってみるか」

そう言ってトランクキャリーを引っ張った。





目的地に向かい歩いて20分ほどしたところで木の数が減ってきた、そろそろだと思い足取りが軽くなったその時。

ドンっ、と後ろから何かがぶつかってきた。

その衝撃で少しよろめいたが、何事かと後ろを振り返る。

人、だった。

俺より少し高い男が本当に申し訳ないという顔で謝る。

「すまないっ!よそ見してて前に人がいるか気づかなかった!いやっ申し訳ない」

「はっはぁ……大丈夫です……けど……」

「それは良かった〜!」

男は笑顔で俺の肩をポンポン叩く。

その時俺はギョッとした。

男が肩を叩くために近づいた時に、腰に剣を下げているのを見たからだ。

下界では武器のような危険物は身につけてはいけないというのが常識であり思わず身構える。

「ん?どうした?」

男はキョロキョロ周りをみる。

零も剣を下げていることに気づいたらしく、軽く身構える。

「……あぁ!なるほど、そんなに身構えないでくれ!これは護身刀みたいなもんさ、戦闘用じゃない」

そう笑顔で、手をヒラヒラさせる。

でも、戦闘用ではないってことは戦闘用の武器を持っているということか?と男を観察していると、零が一歩前にでて俺と並ぶ。

「つかぬことをお聞きしますが、貴方は軍人なのでしょうか、剣を下げているようなので…」

男は手を顎に置いて少し考えながら話す。

「俺は確かに軍人だ、だがそれは副職さ。本職はある奴の護衛、成り行きみたいなもんで軍人をやっている」

「そうゆう君らは?見たところ人間だな?」

零はあたかもその言葉がくると知っており用意しておいた台詞を言うように話し始める。

「はい、私たちは戦闘特別部隊、通称暗部という所に下界から訳あり、配属されることになったため天界に足を運ぶことになりました。私は夜月 零、と申します。こいつはバーナー・ジュリアスです」

俺は零の紹介に合わせて軽く礼をする。

男は暗部と聞いた瞬間、困った顔をした。

「そうか、君たち暗部に配属されるのか…そりゃ大変だなぁ」

「大変?なんかあるんすか?」

「あっいや〜……まぁなぁ〜訳ありっちゃぁ〜訳ありだよなぁ」

男は頭をガリガリと掻くと道の先を指差す。

「まぁそうだなよし、」

「ここで会ったのも何かの縁だな、暗部の所まで案内しよう。俺はインセット=テラスだ、よろしく」

爽やかな笑顔で差し出してきた手を零と俺はしっかりと握る。

「じゃあ案内しよう、暗部まではここから市場を抜けてすぐだからそんなに長くないぜ」

インセットと名乗る男は俺たちと並行に歩き始める。

インセットさんと零は淡々と会話を続けている。

零の対話力は凄いなと感心した俺は話に入ろうと俺は先ほどの疑問をもう一度投げかけてみることにした。

「あの…さっきも聞いたんですけど、暗部ってそんなに大変なんですか?」

インセットさんは爽やかな笑顔で答える。

「そりゃぁ大変だよ!天界軍の部隊で一番忙しい、訓練はハード、任務は全て高レベル、まぁ俺には少しあそこは訳ありというか〜なんというか…」

「あの〜天界軍って天界の軍隊のことですよね?ってことは暗部は天界軍の部隊でもしかして他にも部隊が?」

「あぁまぁそういうことだ、天界軍っていうのはな4つの部隊からなっていて、さらにそこから派生したいくつもの小部隊とか全てひっくるめて天界軍って言うんだ、そんでその4つの部隊は、まずお前らが配属される戦闘特別部隊、この天界の防御面を受け持つアテナ部隊、下界でいう警察の役割を果たすテミス部隊、魔法で天界の生活を支えるヘスティア部隊、この4つだ」

なるほど…でも、戦闘特別部隊以外なぜ神の名前が入っているのだろうか。

聞こうとした前にインセットさんが先に口を開く。

「実はな、俺の妹が暗部に居てな、こう〜綺麗な銀髪でツインテールでな、腰に刀を下げてて身長が低めだ、会ったらよろしく言ってくれ。天界は銀髪や白髪系が多いからわからないかもしれないが」

「わかりました、ところであなたは軍ではどこの部隊に所属していられるのでしょうか」

「俺か?俺はだな、部隊には所属してないんだ」

そういうとズボンの右ポケットから何かを取り出し零に渡す。

「……これは?」

零の手のひらには黒い八芒星に赤いリボンが2cmほどついている、なにやらバッチのような物を渡された。

「なんだ、知らないのか。じゃあ後で暗部の奴に話を聞いてくれ、これは守秘義務というやつでな」

零はじっくり10秒程それを見つめてからインセットさんに返す。

それを適当にポケットにしまいこむとインセットさんは話を続ける。

そんな話を聞いている間に街の中に入った。

「さて、君達は初めてだろう?ここが天界の中心地である城下町、アクロポリスだ」

「アクロポリス………」

なんていうか、一言で言うなら「美しい」と素直に思った。

多分ここは大きな大きな丘なのだろう、だいぶ近くに来たのに遥か向こうに城がそびえ、緩やかな坂に西洋風の家が並んでいる。

この美しい町並みを見ただけでここはまったく違う『世界』なのだと理解する。

「さぁさぁ、暗部の基地はこっちだ」

インセットさんと零は歩き始める、だが俺は立ち尽くしたまま。

「やっと、やっと来れた」

目を閉じれば思い出せる、6年前、憧れの兄の背中を。

兄さんは今もこの世界のどこかで俺の憧れとして頑張っているに違いないと信じて、俺はこの世界になんとか来ることができた。

それなりには強くなったと思う。

だけど部隊に入り、もっと強くなって兄さんが俺に背中を預けてくれるようになるのが今の俺の夢だ。

そのためにはまず部隊に入らなくては。

「おーい、バーナー早くしてー!!」

「……悪いっ!!今行く!」




























どうも初めてcierです。

初めての作品投稿です。

最後まで見てくださりありがとうございます。

この「ワールド・アナイアレンション」はずっと私が書きたかった小説で、私のいろんな大好き要素が詰まった話ですので苦手だ、とか、つまらない、と思った方は見てくださっただけでも感謝の気持ちでいっぱいです。

今回は戦闘とかはまったくないですがこれから多くなります。

短いですが今回はこれで終わります。

ありがとうございました。

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