八話
戦闘??
うそ・・・
うそ・・・!
うそ・・・!!
うそーーーー!!!
ギャンギャン!!
パニックになって狂ったように扉に向かって吠えた。
「大丈夫だ!落ち着け、落ち着けって!」
夕波がパニックになった私をなんとかなだめようとする。
コツン
ビクと体が震えた。
今後ろから何か。音が・・・き、気のせいさきっと。
コツ、ココツ、コツ、コツン、コココッ
後ろから机を指でリズミカルに叩く音が聞こえてきた。
絶対気のせいじゃない。
私は息を潜めてじっと背後を疑った。
人は見ない方が怖くないと言う人と見える方が怖くないという人がいる。
幽霊の話じゃなくて、恐怖に背中を向けるか向けないかだ。
私は後者だ。得体の知れないものに背中を向けていたくない。だから振り返った。
薄暗い部屋の隅に机がひとつ置いてあった。
その前に腰を下ろしている黒い影がいた。右手で机をリズミカルに叩き、身体をこちらに向け。左手には尖った何かが握られている。
「ミト?ミト?」
いきなり吠えなくなった私に不安になったのか外から夕波が呼びかけてくる。
黒い影がゆらりと立ち上がった。一歩一歩とこちらに向かって前進してくる。
一つしかない窓からの明かりが黒い影の足元を照らす。
使い古したスニーカーに黒く薄汚れたジーンズ。
一歩一歩進むごとに光も上に移動してくる。
白いTシャツ・・・いや白かったはずのそれは赤黒く汚れている。
光は胸に、
襟首、
首、
顎、
そして、顔に当たった。
『!!いやあああぁぁぁ』
私が悲鳴を上げると同時に男はナイフを振り上げた。
一瞬キラリときらめき勢い良く振り下ろされた。
『い・・・あ・・・や、いやあ』
ぎゅっと縮こまり頼りない声を上げくるであろう激痛に耐えるような姿勢になった。
パーーーーン!!
いきなり響いた破裂音にビクッと震えた。
思わず目をパッチリと開けて音の方を向いた。
「僕の仲間になにしてくれちゃってんの?」
そこには竹刀を構えた桜が立っていた。男が再びナイフを構える前にさらに攻撃を仕掛ける。
ナイフを持った手首を短く鋭く打ち、ひねるようにして男の横腹に竹刀を叩きつけた。
男はヨロヨロと窓の近くまでよろけた。
「ルー!」
桜が呼ぶと窓の隙間からスルリと猫が入ってきて男に向かって飛びかかった。
背中を引っ掻くように鋭い爪を振り下ろす。
すると男は一言も言葉を発さずかすれて消えて行った。
あまりの一瞬の出来事にポカンとしてしまった。
「あ、あいた。」
ガチャっと後ろでドアが開きドアに押されて転けた。
「あ!ミト!大丈夫?・・・ってあれ?なんかみんな終わっちゃった感じ?」
「ああ、お前が外でわたわたしてるうちに終わったよ。」
桜がふう、とため息とともに呆れたように言った。
「いや、普通の人間はこの場合何も出来ないからな。」
「あ、ミトごめんね遅くなって、怖かったでしょ?」
「シカトすんな!」
桜に声を掛けられ私は我に返った。
『で・・・で・・・』
『で?』
ルーが首を傾げた。
『出たああああぁぁぁ!!』
全身の毛を逆立ててもう一度ドアの所まで下がった。
「え?み、ミト?」
『にああぁぁ!来るな!』
心配そうに近づいてきた桜に吠えた。
「え?嫌われた?」
「いやいや。桜が怖いだけだと思うぞ。」
がっくりとうなだれた桜を夕波がフォローする。
みなさん。お気づきだろうか。
窓は猫がすり抜けるほどの隙間しかなくドアもついさっきあいた。
そんな密室の状態のこの部屋に桜がどのようにして入ってきたのか。
『いやだー!幽霊怖いー!』
桜の体は透けていた。
「ごめんね、ミト。怖くないよ。ちょっと幽体離脱しただけだから。」
「さっさと体に戻って来いよ。」
このまま桜をここにいさせればミトがもっとパニックになることが分かった夕波は桜に言った。
「ああ、そうだね。」
そう言うと桜はスルリと床を通り抜けて行った。
『!!?ぎゃーー!』
やっと期末が終わりました(^o^)/