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四話

ザワザワ



佐々木さんに毛をドライヤーで乾かしてもらっていると入学式が終わったのか外が騒がしくなった。



「「失礼します。」」



一言言うと、桜と夕波が入ってきた。


「あら?あなた達は清水さ・・・先生の生徒ね。もしかしてこの子を引き取りに?」


そう言うと佐々木さんはドライヤーを止めて私を机の上に乗せた。



洗ってもらったおかげで汚らしかった私は見違えるくらいきれいになっている。



「わっ、きれいになったなミト。」


犬でも女だから夕波の賞賛が嬉しい。



「ほんと・・・白黒だったんだな。」


私の毛皮は背中が黒、顔と後ろ足が茶色、後が白という主に白と黒で構成された柄だった。




しばらく桜達は佐々木さんと雑談していたが

「・・・さてと、そろそろカバンを取りに行くか。」

と言うと立ち上がったので私も着いて行こうと立ち上がった。

話している内容が授業の事とかでちんぷんかんぷんだったので暇だった。



廊下を歩いて行くと階段に着いた。大型犬でも子犬だから、一段が顔の高さまである。

登れないことは無いけどとてもつかれる。



ーークーン


「ん?あれ!ミト、いたの。」


夕波が気づいて戻って来てくれた。ていうか桜来いよ。飼い主だろ。


夕波に抱き上げてもらうと一気に視野が高くなった。

そして、そのおかげで、いらんものも見てしまった。


二階の階段すぐ隣にあるトイレから覗くおかっぱの制服を着た女の子。


バッチリ目があった。


「あれ?見えてる?・・・今見たでしょ?見たよね?今こっち見てたよね!?」


女の子は一瞬で私の前に一瞬で移動してグイグイ迫ってくる。


ヤダ!絶対この人人間じゃないよ!!


「見た?見た?見てたよね?ワン公今見てたよね!」



ーーわう!


極力見えてないふりをしていたが思わず。

「ワン公じゃない!!ミトだ!!」

と吠えてしまった。


それを聞いて女の子はニヤァと笑った。

口が耳元まで裂け真っ黒な口の中があらわになった。


ーー!!ギャウン!




「え、ど、どうした?」

瞬時に夕波の腕のなかに頭を突っ込み震えた。

怖い怖い怖い!!


「おい、春子!ミトをおどかすな。」


顔を上げるともうひとつ上の階段から桜が顔を出し女の子を睨みつけてた。


"だって〜、桜が無視するんだもん〜"


女の子・・・春子は顔を元に戻しふくれっ面をした。


「女子トイレなんか直視出来るか!」


そう言うと桜は上に上がって行った。


"欄とは話す癖に〜。・・・ミトちゃんだっけ?おどかしてゴメンね。怖かった?"


コクコク頷くと春子はそっかと笑った。






☆☆☆☆☆☆☆




三階まで上がり教室に入ると


ほとんどの人が帰っていて、楽しそうにおしゃべりしながら黒板にデカデカと書かれた


入学式


の言葉の周りをデコレーションしている女子の一団がいる位だった。

その中の一人が夕波の方を向いた。


「あ、犬だ。」


その言葉にさらに何人かの女子が振り返り、こっちに寄って来た。


「わあっ、可愛い!」

「本当だ!!大谷くん、なでてもいい?」

「可愛い!!」


その言葉にさらに他の女子達も寄って来てすぐに私はもみくちゃにされた。


「この子大谷くんの犬?」

「・・・いや、一応僕のだけど。」


夕波のバッグを持った桜がそう言うと教室が一気に静まり返った。


「え、あ、そうなの?」

一人がおどおどしていった。桜はため息を一つつくと夕波にバッグを押し付けた。


「ほら、行くぞ。」

「え、ああ、サンキュー」

「ほら、ミト。」


自分のバッグのくちを開いて、私に促してきたので飛び込んですぐに顔を出した。


「・・・ミトー。頭引っ込めて。閉めるよ。」


ヤダ。息苦しいもん。外見たいもん。存在を主張しないとまたバッグを投げられたりされそうだもん。


桜はため息を付くと諦めてバッグを肩にかけた。






「夕波って本当モテるよな。」

「・・・いや、今回はミトがいたし・・・」


夕波は軽く頭をかいてから、ジロリと桜を見た。


「・・・それに、それは嫌味か?」

「は?なんでそうなる。」


うええ!?なんであれに気づかない!?


女子達心の中でキャーキャー言いながらお互いを突っつきまくってたじゃん!


私でも気づいたぞ!


「それよりもこの後どうする?」

「そうだな、うちに来るか?ルーもミトに紹介したいし。」

「いきなり行って大丈夫か?」

「今更なにいってんだ桜ならうちは大歓迎だぞ。」

「・・・じゃあバッグおいたら行くよ。」

「ああ、わかった。」


そんな会話をしながら階段を降りて行くと。

"ねーえー、反応してよ。桜ーミトちゃーん。"

私達を見た途端に女子トイレから飛び出してきたが、今度は無視してみる。

"ミト〜〜!!・・・あれ?慣れちゃった!?ミト!ミト!?"

低い声でまた口を裂けて見せたがこれも無視して階段を降りていった。




「じゃあ後で」

そういって桜と夕波はあの公園の近くの駅で違う方面の電車に乗り込んだ。

ちなみに犬も乗車券が必要なのでそれは桜が泣く泣く出費していた。

それから、四つ目ぐらいの駅で降りると10分程歩いて桜の家に着いた。


「ただいま。」

桜は着いたアパートの真ん中あたりの部屋に入った。多分104号室と書いてあった気がする。

桜の声はアパートに虚しく響き誰もいないことを知らせた。

そんなことも気にせず桜はさっさと私服に着替える(慌てて隠れた)と私をもうちょっとゆったりとしたバッグに移し替えると再び家を出た。



電車に乗って終点まで行くと私服に着替えた夕波が待っていた。その後ろにある車からは夕波のお母さんだろうか?おっとりとした表情の女の人が手招きしながら立っている。



「お待たせ。」

「待ってたわよ、桜君。その子がミトちゃん?」

「あ、はい。」


桜は私を鞄から出して夕波ママの前に掲げた。


「あら、可愛い!きっとお父さんも気に入るわよ。」


さっそく全員車に乗り込むと大谷家に向かった。




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