三話
先ほどまでの雨は本格的に降り出し、ひっそりとした廊下をより暗く見せている。
電球は灯っておらず非常灯の明かりだけが緑色の光を投げかけている。
そこを忍び足で歩む二つの影。
片方のかげは何かに怯えるように自身のバッグの紐を握り締めている。
二人は何かを話し合い廊下の片側に並んだ部屋のドアの一つの前で立ち止まった。
ソロソロと開けると無人の部屋。
ホッとしたように息を吐いた二人は部屋に踏み入り・・・・・
扉の影に隠れていたものに捕まったのであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「アホか、お前ら!!」
このクラス、1年G組の担任清水 康之は握った拳を顔の前でプルプルと震わせて怒鳴った。ヒッとばかりに目の前の生徒二人・・・
神道 桜と大谷 夕波が首を竦めた。
「入学式に遅刻する奴があるか!!」
ちなみに入学式だからと言って初対面ではない。こいつらは中1の時から知っている。
この学校は私立で中学と高校が一緒なのだ。
まさか入学式に遅刻してくるやつだとは思わなかったが。
「はぁ、もういいから体育館行ってこい。」
二人はすみません。と言ってバッグを自分の席に投げるようにして教室を出て行こうとした。
ーーキャウン
神道のバッグが机に乗った途端、変な鳴き声がした。
「「・・・あ。」」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
学校に行くからとバッグに押し込まれている。
今日は入学式らしくバッグの中には筆箱ぐらいしか入ってない。
しばらくジッとしていると桜達を叱る声がした。
その迫力にビクッと首をすくめる。
その後桜が私が入っていることを忘れてバッグを投げた。
体が浮くような浮遊感の後足から衝撃がきて、思わず声を上げてしまった。
ついでにコロンと転がる。
あっと言う桜達の声の後に足音が近づいてきてバッグが開けられた。
隅っこにちじこまって見上げると強面の男が覗きこんでいた。
「あの!・・・ええっと、」
「こいつは預かって置くから、いいから入学式行け。」
なんとか言い訳しようとした夕波の言葉を遮って先生は言った。
「えっ!?」
「いいから行け。」
先生の有無を言わせぬ口調に、はい。と軽く項垂れながら桜達は出て行った。
桜達が出て行くと先生は私の首の後ろの皮をつかんで持ち上げた。
じっくりと見たあと
軽くチッと舌打ちをして、
「汚いな」とつぶやいた。
そのまま教室を出て教室のすぐ隣の階段を降りた再び廊下を歩くと一つの扉の前で止まった。ドアの大部分に貼られたガラスから教室のとは少し違った机がズラリと並んでいるのが見える。清水先生がドアを押し開けると暖かく心地よい空気が流れてきた。
「おい!佐々木!」
いきなり、清水先生が職員室に響くほどの声を上げた。
は、はいと応じる声がすると小柄な女性がかけてきた。
「生徒が連れて来たんだか捨て犬らしくて汚いから洗ってやりたかったんだが、俺も入学式に出なきゃいけなくてな。頼めるか?」
そういって私はズイッと女性・・・佐々木さんに差し出された。
「えっ?あ、はい!わかりました。」
佐々木さんは驚いたような声を上げながらも私を受け取った。
じゃあ、と言うと清水先生は入学式に行った。
「・・・ふふっ。頼まれちゃった」
佐々木さんが嬉しそうな声を出して私をぎゅーっと抱きしめた。
顔が緩んでる。
ーーあら、嬉しそう。
そのあと、犬を洗いながら笑っている女性がいたそうだ。
ミト「この学校に幽霊いないんだね。一人もお話に出てこなかった。」
??「・・・なにいってるの。学校だもん。これから続々出てくるよ?」
ミト「!!!誰?!」
佐々木さん「ワンちゃん、キョロキョロしてどうしたの?」
??「ふふふっ」