*16*
ははははは・・・
・・・・・彼女は生きている。
何故か笑いが込み上げてくるのに、涙が止まらない。
彼女は悪徳公爵の娘だからと。
表情がないからと、勝手に人形と称し下げずんでいたサフィーリアは、きちんと見れば実に優秀な王妃だった。
私はなぜ気づきもしなかったのか?
なぜ彼女に、サフィーリアにきちんと向き合おうとし無かった?
・・・・悔やまれてならない。
・・・・・・・生きててくれたことが嬉しいのか、残念なのか。
彼女が傷を負った事を、生死の境にいる事を知った侍女たちは悲しみ、王である私を遠慮なく詰ってくれた。
なじられ、責められることが、これ程嬉しいと思ったのは初めてだった。
「なぜ、あんなにも穏やかな王妃様を蔑ろになさったのですか?」
「王が、ご寵姫様を迎えられた際も、耐えられ寵姫を害することのなかった王妃様に対する仕打ちはいったいなぜなのですか?」
「悪徳公爵家出身というだけでなじられ、王妃様のなされていたことを見ることもなかったあなたは、王妃様の一体何を見ていたのですか?」
「なぜ、王妃様がこんな事にならなければいけなかったのですか?」
・・・・・詰め寄られ、なじられた。
侍女たちにとって、サフィーリアが、良い主人であるのであろうことがうかがえた。
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そして、内乱は終結し、王妃殺害未遂の罪をもって公爵一派は一掃され、国は平和を取り戻した。
私は、結局何もしていない。
嫌、何もしなかったのだろうか?
跡継ぎを産んで育ててくれたサフィーリアに感謝することも
国民の豊かな生活の為に苦心してくれたことへの感謝も
私が放り出していた義務をこなしてくれていた感謝も・・・・
彼女は一命を取り留めたとはいえ、その傷は深く回復にはかなりの時間を要することが、分かっていた。
内乱を終え、亡くなった者達の弔いが済むと、ケガの為病床にある王妃サフィーリアの早期回復を祈るミサが盛大に行われた。
ミサには国中から人々が集まってきた。
国を愛し、国民の為に尽くした王妃は人々に愛されているのだやっと、理解した。
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