*15*
チャールズの奇襲直後から王妃は、予断を許さない状態が続いている。
王子と姫は、そんな母親の傍を離れようとしない。
ジェームズたち側近も、時間があると彼女の様態を見に行ってる。
私も、時間があると王妃の病室へ行っていた。
病室で、カインは王子と姫に謝っていた。
「内乱の主犯格として、斬った後直ぐに縛り上げなかった私の失態です。
傷の為、動けないだろうと油断したことがこのような結果になりましたこと、申し訳ありません。」
王子が首を振りながら言う。
「カインは母上を助けようと手を伸ばしていたのに、私は何もできませんでした。」
姫が少し枯れた声で付け加える。
「悪いのは、カインじゃなくて、母様を斬った人だもん。カインは悪くない。」
・・・・言った傍から泣き出す妹姫を、王子が抱きしめる。
姫の話し方が常のものより、幼い気がした。
『悪くない』と言われたカインも、アルベルトに肩を叩かれながら、声もなく泣いていた。
襲撃から数日たったある日、サフィーリアの瞼がわずかに震えた。
母親が目覚めた安堵からか、泣き出す王子と王女。
・・・そばにいた侍医が、わずかに微笑んだ。
サフィーリアはそんなユリウスの頭を、アルティナの泣きはらした顔をなでる。
・・・・・私に柔らかな微笑みを向けてくれた?
サフィーリアの唇が震える。
「・・・・・ケガはない? ・・・・・(私の可愛い子供達)大好きよ」
吐息にのせ、囁くようなその一言は妙にはっきり聞こえた。
そう呟いて彼女は再び瞼を閉じてしまった。
力なく、ベットを滑り落ちていく手。
驚いて、その手を追う。
侍医が、サフィーリアの命の危機を脱したであろうことを告げる。
子供達は、再び深い眠りに誘われた母にしがみつく。
少し前まで、絶望を含んでいた顔に喜びが浮かぶ。
安堵からか泣き出してしまった子供達は、そのまま泣きつかれて眠ってしまうまで、眠ってからもしがみついていた。
王妃様ですが、出血し過ぎで目がかすんでいる為、王様を認識しておりません。
子供達に向けた微笑みを自分に向けられたモノだと思った陛下。
ああ、勘違いな馬鹿陛下。
お読みいただきありがとうございました。
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