*14*
「いやぁ―!!」
「母上!!」
「サフィーリア!!」
小さな王子と王女の絶叫が響き、私も知らず叫んでいた。
一番近かったカインが手を伸ばすもわずかに及ばず、剣先が王妃の体をなで、剣先から赤い液体が散る。
直後、切りかかってきたチャールズは近衛の突き出した剣に差し貫かれ、絶命した。
・・・王妃は生きていた。
傷口からは血が溢れ出し、服を染めるだけでは飽き足らず床に赤い水たまりを作っていく。
「サフィーリア?!サフィーリア!!サフィーリア!!」
思えば、自分の部屋で散々呼ぶ練習をし、本人を前に一回も呼ぶことのできなかった彼女の名前をやっと呼べた。
私に抱き起された王妃が目をかすかにあけ、苦痛に呻きながら呻いた。
「どうか、・・ユリウスと・・・・ア・・ティナ・・・わたくしの・・・・侍女たち・と・・・の・・・い 命・・・を・・・・・・お助け・・・ください。」
苦痛にゆがみ、苦しい息のもと出てきたのは、子供達と侍女たちの助命だった。
優しく手を握り、「分かった」と返せばほっとした顔をされた。
いつの間に駆け付けたのか、侍医たちによってサフィーリアの治療が施されていく。
私は、ただ、それを呆然として見ていた。
私は、今までどれだけの事を彼女にしてしまったのだろうか?
苦痛に呻きながら嘆願するサフィーリアに対し言いしれない後悔がつのる。
死を覚悟しているであろうサフィーリアが私に、彼女の死後彼女に仕えた侍女たちはおろか、ユリウス達まで殺してしまうのではないかと懸念を抱いていることに少なくはないショックを受けた。
応急処置を施され、病室に運ばれたサフィーリア。
私は、彼女の傍らで強く強く彼女の、サフィーリアの手を握り締める。
ユリウスがエグエグ言いながらサフィーリアのそばで、「母上、ははうえ。」と泣いているのも、アルティナが「かあさま、かあさまぁ」と泣いてるのもどこか遠くに感じていた
お読みいただきありがとうございました。
誤字・脱字など有りましたら教えていただけると助かります。
陛下は、結局押しやられた子供を受け止めることはしませんでした。
子供達を受け止めたのは陛下と一緒に駆け付けた一般(?)近衛騎士の方々です。




