4:出逢い
一瞬、頭が真っ白になった。
今まで神殿にいる何人もの巫女を見てきたが、一番貧相な建物にいる彼女が、今まで見てきた誰よりも神々しく見えたなんて。
そして、自分が言葉を忘れた生き物になりかけた頃
「おい、ヴァリアス!!お前先に行くなと言っているだろうが!!…って、え?」
後ろから追い付いてきたアレクが、俺同様目を見開いて彼女をポカンと見た。
俺たちはお互いに随分と間抜けだ。
しかし、アレクのアホ面のお陰でようやく言葉が滑り出てきた。
「貴女が暁の者か?」
酷く平坦な声音になったがなんとか言葉になった。
それを聞いて彼女は困ったように答えた。
「はい、陛下。私が当代の暁の者でございます」
「…ちょっと待った、貴女はこちらの方を陛下と仰っているが、どうしてそうだと云えるのですか?」
俺の隣から割って入るようにアレクが尋ねる。彼女は一瞬アレクを凝視し、また微笑む。
「長老の元に御出になられた騎士様ですね、はじめまして」
今度はアレクが瞠目したのが分かった。どうやらアレクが彼女に会うのも初めてらしい。
「騎士様、ありがとうございます。ちゃんと『手順』を踏んでいただいて」
「…貴女には、俺達が何者なのかまるで見えているようだな」
「いいえ」
はっきりと、言葉が返された。
あまりに短い単語すぎて逆に面を食らう。
「…では、何故?」
探るように俺から聞いた。
彼女は思いの外すんなりと答える。
「私には残念ながら見えません。私ではなく、長老が『前見の力』――例えば、誰が来るか、どのような事が起こるかなどを視る力をお持ちなのです。勿論それが完全に予測出来るわけではありませんが、今度は陛下が、きちんと答えをお持ちくださると申しておりました」
「……」
「……」
何だか色々聞きたい事が増えた気がした。多分、渋面のままの隣の彼もそう思っているだろう。
その顔を見ていた娘がクスクスと笑い出した。
「ああ、申し訳ありません…お二人の疑問にはお答えさせていただきますので――そんなお顔をなさらないで下さい」
怪訝に思ってとりあえず隣のアレクの顔を覗く。奴も同じことを思ったのだろう、こっちを見た――眉間にシワが寄ったままだぞ。
「このような場所で申し訳ございませんが、お掛け頂いてよろしいですか?お答えさせて頂くには幾分長くなりますので」
古いですがちゃんと座れますので、と促される。
流石に外観ほど中は古くないので躊躇せずに座った。
まださほど遅い時間ではなかったが、長い話になることは予想がついた。
区切れが悪いので今回は短めになってしまいましたー。