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序章:その伝説
――暁の一族は人々の願いを叶える力を持つものがいるという。
国に起こる厄災を、危機を、その万能の力で回避し、人々に安寧をもたらすと。
それは古より伝わる伝承。その者が現れる事を人々は望み、渇望する。
遠い昔の伝承には暁の者が王の楯となりそれを支えたとされ、また他の伝承には何代も昔の王の后には暁の娘がいたと伝えられているが、その実記載されていたであろう資料は断片を遺すのみで風化されて久しい。ただ、暁の者は王国のため、民草のため、王の傍らを支え、数々の望みを叶えていたという。
この国の民ならば小さな子供でも知っている逸話である。
そんな一種の伝承に――人々は縋る。
飢饉が相次ぎ、内乱は収まる気配もなく、人々は疲弊していた。
王室で起こった王位継承権争いを皮切りに、国中が疲弊していた。
一年に満たない――でも人々の生活には苦しく長い時間が経過し、ようやく争いが収束を見せた頃――
生き残った新王は、側近の騎士に告げた。
――暁の一族を探せ、と