脂肪フラグバリ3
「神様!? お前が!?」
「そうです私が神です」
「で、人類の運命を決めている?」
「そうですそうです」
「じゃあ俺の体を治すこともできる?」
「もちろんです。そういう運命を選べばいいんですから」
「治してみろよ」
「はいどうぞ」
とクロトが言うのと同時に、さっきからズキズキと痛んでいた脇腹が何ともなくなった。
どうやら本当にこいつが治したらしい。
てかこいつ馬鹿だろ。こんな簡単な口車に乗せられて。
まあいい。俺の体が全快したからな。
「ありがとう。じゃあさよなら」
すっくと立ち上がり、俺はクロトのいる位置から逆方向に向かって歩いていく。
「どこ行くんですか純夜さん」
ぴたり。足が止まる。
こいつは今何と言った。
純夜。
俺の名前は折戸純夜という。
何でこいつが俺の名前を知っているんだ。
「どうしたんです? そんな固まって」
俺が思案しているうちに隣に来たらしい。
「いや、何でお前俺のなま……え」
横を向いて理由を問いただそうとし、またもや固まる。
だってこいつ。めっちゃ可愛いんだもんよ。
絹糸のように細く、透き通るような金髪。そして髪に見合った碧眼。肌も雪のように白く、顔の造作も整っている。
身長は俺より頭一個分くらい下だ。人間だったら中学生くらいだな。人間じゃないけど。
でもどっからどう見ても美少女。
そら見惚れるべ。
「名前? あー、そりゃ知ってますよ。神ですから」
「神様に個人情報保護法は通じないのか」
「神ですよ?」
「……はいそうですね」
心底疑問そうな顔しやがって。
そんな顔も可愛いなんて俺は思ってないからな。
じゃなくて。
「俺帰っていい?」
「そんなの許しませんよ」
「……何で?」
俺は神様であるクロトからすればただの一般人。なのに何故。
「あなたが死亡フラグバリ3だからです」
指を三本立てて言ってくる。
「バリ3て、携帯じゃないんだからさ……って、死亡フラグ!?」
「そうそう脂肪フラグ、おっと違った。死亡フラグですね」
「俺死ぬの?」
「はい。今のままだと」
「へー……」
脂肪だったらまだ良かったのに。
「で、お前と何の関係があんの?」
神様と死亡フラグにどこに接点があるのか全く分からない。
「さっき言ったじゃないですか。私は人類の運命を決めてるんですよ?」
「あー、そういやそうだった」
クロト達神様は人類の運命を全て決めているんだった。
それが俺の死亡フラグとどう繋がるか。
……一つの可能性に繋がった。
「まさか、お前。俺を殺そうと……!?」
だったら早く逃げなければ。
「違います違います」
「じゃあ関係ないじゃんか」
「今から説明しますから。でも立ち話も何ですし」
「ん? 何だ?」
チラチラと横目に俺を見てくるクロト。
「家に上げて頂けないでしょうか?」
「ああ、そんな話長いの?」
「まあそれなりに」
日も暮れてきたし、あんまり長引くと親に心配がかかる。
「ふーん。じゃ、上がってくか?」
「はい!」
すっごい喜びようですな。
「じゃあ早く行きましょう」
「そっち逆方向だからな」
ということで神様を家に上げることになった。