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最強剣豪が朝飯前に雑魚どもを倒して俺TUEEEーーーする話  作者: makubes


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1/1

天下無双と謳われた剣士の俺、旧友が勝負を挑んできたので朝飯前に片付けた

 薄明かりの中、二つの影が相対して見えた。

 木々が四方を囲み、空だけが白く、遠い。


 桐島又兵衛、抜き身を構え、見つめていた。

 二十歩の間合い。霧の向こうに見える。

 三村源之介、鞘を捨て構えている。

 両刃が朝の薄光を吸って、鈍く光っていた。


 十三年、共に轡を並べた。


 霧の中で、雫が落ちた。

 草が揺れた。

 源之介が、半歩動く。


 夜明けが近い。梢の向こうが白んでいた。

 足元の草は露に濡れ、黒く湿っていた。

 遠くで鳥が鳴き、あたりは静まる。


 又兵衛が動く。

 草を踏む。湿った土が重い。

 源之介も動く。一歩、また一歩。

 切っ先が、持ち上がった。

 一合、音が響き、欠けた刃の破片が頬に刺さる。


 息が白く流れた。霧に混じって、消えた。

 

 二合、三合。

 泥が跳ね。露が散った。

 又兵衛が右に大きく傾ぐ。

 源之介の刃が走った。

 鈍い音がした。


 血片が飛び。草の上に指が落ちた。

 又兵衛はちらと己が失ったものを確認する。足を立て直し、刃を再び構えた。


 霧が晴れ始めた。

 梢の向こうが赤く染まっていた。夜明けだった。

 木々の輪郭が、朝の光の中にくっきりと浮かびあがった。

 

 二人の足元は、泥と黒く湿った土だけがあった。


 又兵衛が踏み込む。重く。鋭く。

 刃が交わり、押し合い、崩れた。

 

 刃が腕を掠め、血潮が吹き出す。


 源之介の中央を刃が駆け抜けた。

 ゆっくりと沈んだ。膝が泥につき、両手が地面をついた。


 同時に又兵衛の手から、刃が落ちた。


 源之介の目に、光が満ちた。

 野だった。夏の、広い野原。草が揺れていた。

 若い又兵衛が、刃を構えていた。自分も構えていた。二人とも笑っていた。

 城があった。夕暮れの城。石垣の上に並んで立っていた。

 又兵衛が何か言った。自分も何か言った。声は聞こえなかった。

 光が、薄くなった。


 地面が顔に近づく。

 草の根元、露が一粒、葉の先に残っていた。それが、見えた。

 夢の終わりか。


 又兵衛は、止血に入ったとき、己の指が動きを止めたことを知る。

 膝が崩れる。泥が体を濡らす。


 目を閉じた。


 野だった。夏の、広い野原。源之介と並んで走っていた。

 手柄を立て、名を上げた。戦場で肩を並べた。

 なにゆえ、刃を握ってきたか。

 光が、薄くなった。


 目を開けた。朝の光の中に、源之介が倒れていた。


 又兵衛は、しばらく動かなかった。

 風が吹き、草が揺れる。


 源之介の体が、泥の上に横たわり、腹から赤黒いものが広がっていた。

 又兵衛の腕は動かず、功名の道は途絶えた。

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