婚約
女神祭の翌日、イージスとアリスは冒険者ギルドに来ていた。
冒険者ギルドの一室。
圧倒的なプレッシャーを放つエリスを前に、イージスとアリスは萎縮していた。
やはり昨日の件でとてもお怒りらしい。
そんな空気を変えたのは、アリスとエリスの父である”マルクス”だった。
彼は、その類い稀なる才能で平民から貴族に成り上がった魔術のスペシャリストである。
そんなマルクスは冷静に話を整理すると、イージスにお礼を言い、アリスに謝罪をし始めた。
どうやらアリスが言っていた政略結婚というのは、他の名門貴族の息子が、社交界で会ったアリスに一目惚れをし、半ば無理やり取り付けたものらしい。
アリスの父であるマルクスは貴族といっても新参者なので、何か特別な理由でもない限り、断ることは難しい。
つまり今アリスが家に帰っても、結婚の未来は変えられない。
そんな話をしていると、マルクスの妻である”ファウスティナ”がアリスの髪を見て口を開いた。
婚約者がいればいくら名門の貴族でも、表立って手を出せない。
「だからアリスとイージスで婚約すれば良い」と。
場の空気が凍った。
エリスは絶句し、マルクスは頭を抱えている。
一方、アリスは「イージスが良いなら」と言って少し期待するような眼差しを向けていた。
イージスはアリスを見て考えた。
ここで婚約を拒否すれば、アリスは無理やり結婚させられてしまう。
貴族の運命と言えばそれまでだが、できることならなんとかしてあげたい。
それにファウスティナが言っているのは、あくまで婚約であり、婚姻ではない。
ほとぼりが冷めたら、解消すれば良いのだ。
そう思ったイージスはアリスと婚約することを決意した。




