一攫千金
冒険者になったイージスによる最初の依頼。
冷たい空気、微かに聞こえる水滴の音。
洞窟はどこか神秘的で、美しい。
イージスは洞窟にいた。
冒険者登録をすると、ギルドの掲示板から依頼を選ぶことができる。
冒険者と依頼の難易度にはA、B、Cランクという基準があり、自分のランクと同じか、それより低いランクの依頼を受けることができる。
例えばベテラン冒険者のランクはBなので自分と同じBランクかCランクの依頼を受けられるが、Aランクの依頼は受けられない、といった感じだ。
イージスは1番低いCランク冒険者なので、同じCランクの依頼である洞窟での薬草採取をすることにした。
小太刀の購入により、いっそうイージスの懐は冷くなった。
最近は宿の支払いも危うく、日頃の無駄使いを後悔していた。
この状況を打開すべくイージスは薬草採取に奔走していた。
洞窟は薄暗く、あらゆる方向からモンスターが襲ってくる。
感覚を研ぎ澄ませ、いち早く相手の位置を確認することが大切である。
洞窟の奥深く、微かに光が差す場所に薬草があった。
イージスは薬草を採取していると、モンスターの気配を察知した。
イージスは小太刀を構え、近づいてくるモンスターを真っ二つにした。
切ったのは、ビートルと呼ばれる蜂のモンスターだった。
小太刀の切れ味は凄まじい。
状態の良いモンスターは高値で売れるのでイージスはとても喜んだ。
しかし冒険者の基本は依頼優先である。
イージスは薬草を背中の籠に入れ、一度ギルドへ戻ることにした。
薬草の質が良かったららしく、多めの報酬を受け取ったイージスは大きな袋を購入し、万全の状態で洞窟の中へもう一度足を踏み入れた。
しかし戻るとビートルの死骸がなくなっていた。
代わりに洞窟のさらに奥に、強い気配を放つモンスターがいた。
イージスはその気配のする方へ向かうと、スパイダーと呼ばれるクモのモンスターが、ビートルを捕食していた。
どうやら奴がビートルを持ちだしたらしい。
スパイダーがイージスの気配に気づくと、何かを唱え、水の魔法を使い始めた。
魔法を使う個体である。
洞窟の中に雨が降る。
雨は粘り気があり、イージスの動きを鈍らせる。
イージスは炎と雷の2属性の魔法を使うことができる。
スパイダーが腹に水を貯め攻撃を仕掛けようとしている中、イージスはあえて炎の魔法を使った。
スパイダーは炎の魔法で焼き尽くされた。
洞窟に降っていた雨は蒸発し、イージスの魔法により洞窟の一部が崩落した。
少し魔力を込めすぎたようだ
一撃で倒したものの、イージスには少し懸念点があった。
それはスパイダーが粘り気がある特殊な水魔法を使っていたことだ。
ブラックベアは他のモンスターを従えていたが、特殊な魔法は使っていなかった。
特殊な魔法を使うモンスターが他にもいるとすれば、早めに対策をしないければいけない。
そんなことを考えていたら、イージスは重要な事に気がついた。
「スパイダーを回収できない」
魔法を使うモンスターはAランク相当の難易度があり、ギルドに持ち帰ればかなりの報酬を貰える。
しかしスパイダーは既に瓦礫の下である。
そのためギルドに持ち帰ることができない。
つまり当初の目的である、金銭を稼ぐことができない。
イージスは強いショックを受けた。
結局、収穫は薬草のみ。
さらにスパイダーとの戦いで体はベタベタである。
イージスは気分転換と魔力回復のため少ない貯金を使い、温泉郷に行くことにした。
温泉街にて
温泉は至高のひとときである。
体だけでなく、心も癒すこの瞬間は何者にも代えがたい。
宿の温泉も最高だが、やはり温泉巡りも最高だ。
イージスは温泉を楽しんでいた。
1000年前は魔法を極めるため、研究を重ねていた。
そんな中、イージスには唯一とも言える趣味があった。
それが温泉巡りである。
温泉から出ると、服を変えて市場に繰り出した。
王都とは違う温泉地特有の名産品にイージスはとても心を惹きつけられた。
しかし金がない、金がないのだ。
イージスは断腸の思いで帰路についた。
帰り道、盗賊に襲われたので返り討ちにした。
今のイージスは12歳前後の見た目なので、標的にされたのだろう。
盗賊の馬車を調べると、1人の少女が誘拐されていた。
少女は青い瞳と金色の髪を持ち、良いところのお嬢さんといった感じの衣服を身につけていた。




