魔術修行
婚約を決めた後、イージスはアリスの家に訪れていた。
なんでもマルクスがお礼をしたいらしい。
イージスは、アリスのことをギルドに連れていかずに勝手に家に連れていっていたので、後ろめたい気持ちもあったが、婚約の件もあるので言われた通りついていくことにした。
領地には1時間もかからず到着した。
マルクスの領地は大きいわけではないが領民との距離が近く、のどかで落ち着く場所だった。
食事をご馳走になりながらマルクスとお礼について話をした結果、1週間に1度、魔術の稽古をつけてもらうこととなった。
翌日、気合十分なイージスは、早速マルクスから指導を受けていた。
魔術は、魔力の放出、制御、変質の3つの段階を経て使用できる。
イージスは魔力コントロール、つまり制御の段階で躓いている。
それを聞いたマルクスは、なにやら大、中、小のガラス玉を持ってきた。
どうやらこのガラス玉が「いっぱいになった」と思うくらいの魔力を込めればいいようだ。
イージスはそれを聞いて、大きいガラス玉に魔力を込めると粉々に砕け散ってしまった。
それを見て、マルクスはとても驚いていた。
本来、内に秘めた魔力がどんなに多くても、人間が1度に「放出」できる魔力はあまり多くない。
だから魔力の制御といってもほとんどの人はあまり調整する必要がない。
しかしイージスは1000年前、魔法を極める段階で、1度に放出できる魔力量を増やしていた。
マルクスは困ってしまった。
魔力の放出を抑えるのは、感覚的な面が大きい。
しかし大きいガラス玉を破壊する程となると感覚だけでは難しく、魔術を使えるようになるまで途方もない時間がかかるだろう。
ということで、イージスは滝行をしていた。
1説によると精神修業は集中力を高められるので、魔術のコントロールを劇的に改善させることができるらしい。
滝行とは東方から流れてきた「古事記」に記された方法である。
イージスはその日から毎日、滝行を含む精神修行をおこなった。
最初はマルクスも同行できたが、アリスの婚約に関することで忙しいらしくイージス1人の修業が続いた。
それから数週間がたち、イージスは小さいガラス玉の段階まで成功させていた。
しかし、このペースだと何年かかるか分からない。
精神修業も無駄ではないが、いまいち何かがつかめなかった。
そんな中、イージスはいつも通り依頼の薬草採取をしているとふと思いついた。
薬草を採取したときは、かごに詰め込んで運ぶ。
そして、それよりも多く採取したときは力を込めて圧縮して運ぶ。
「それを魔力にも応用できないか」と。
イージスはマルクスからもらったガラス玉を使って早速実践に移った。
出力する魔力を抑えるのではなく、出力した魔力を圧縮する。
イージスはそれから魔力を圧縮する訓練を精神修業と共にするようになった。
それから1ヶ月後、イージスは見事に魔力の圧縮を成功させた。
その結果、マルクスの指導が本格的に始まった。
マルクスは初級魔術であるライトの術式をどこからか持って来て、イージスとなぜか隣にいるアリスに渡した。
アリスが隣で苦戦してる中、イージスがライトを発動させると、領土全体が光に包まれた。
その後、なんとか視界を取り戻した3人は気を取り直して次の訓練に移行することにした。
2つ目の魔術はカッター、目標に軽い斬撃を与えるものである。
早速始めようとしたが、なぜか嫌な予感がしたので領の外の森でやることにした。
イージスは隣で葉っぱを切っているアリスを横目にカッターを発動すると、何本もの木々がバラバラに切断された。
どうやらイージスの魔術は他の人より強大らしい。
おそらく、魔力の圧縮による影響だろう。
色々あったが、とりあえず魔術の行使に成功したイージスはお祝いのため、アリスたちと食卓を囲んでいた。
するとマルクスは神妙な面持ちで話しはじめた。
どうやら例の名門貴族がまだアリスの婚約について認めていないらしく、理由として「イージスの身分が平民」ということを上げているらしい。
もちろん結婚には身分も出生も関係ないのだが、このまま放置するというのは忍びない。
そこでイージスに魔術学園卒業という実績をつけてアリスとの婚約を認めさせようということらしい。
魔術学園を卒業すれば身分等も関係なく、魔術師としての地位が保証され、向こうはアリスの結婚相手としてイージスを認めざるを得なくなる。
その分、試験や進級は難しいらしいがマルクスはイージスの魔術を見て、「心配はない」と確信したらしい。
イージスはその話を聞いて2つ返事で了承した。
「マルクスは優秀な魔術師だが、流石に全ての魔術を教えられるわけではない」
できるだけ多くの魔術を学びたいイージスにとってこの話は好都合だった。
試験は半年後、イージスはマルクスに引き続き指導を受けながら魔術学園に備えることとなった。
なんとか序盤を終わらせることが出来て良かったです。
学園編も楽しんでもらえるように頑張ります。




