表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイアーモンドクリーム----コーヒー好きな剣聖は今日も弟子を鍛えます---  作者: イサクララツカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/16

4話 「コーヒー三杯分の本音」

朝のサルトリ村は、今日も鶏がうるさい。

 レイは縁側に小さな丸テーブルを出し、コーヒー豆を挽いていた。香りが立つ。気持ちは落ち着く。――落ち着くはずだった。

「面談をする」

 レイがそう言うと、正座の二人が同時に背筋を伸ばした。

「はい、師匠!」

「承知しました、レイ師匠」

 ドワーフ娘マイ・ジョンソンと、騎士アーモンド・ハイネ。

 いきなり住み着いた弟子が二人。状況が雑すぎる。

「……勘違いするな。試験でも詰問でもない。ただ、聞く」

 レイはコーヒーを注ぎ、手帳を開いた。簡単なメモ用だ。

「何を?」

「どうしたいか。どうなりたいか。装備。生活。あと……私生活」

「私生活!?」

 マイが目を輝かせ、アーモンドは一瞬だけ目を逸らした。

「順番にいく。まず――マイ」

「はい!」

 マイは元気よく返事をし、椅子に座り直した。背は低いが、存在感は妙に大きい。

「目的」

「最高の武器を作れる鍛冶師になることです!」

「鍛冶師?」

「はい! でも――」

 マイは一瞬だけ言葉を切り、レイを見た。

「剣を振る人の気持ちが分からない鍛冶師は、二流です」

 レイはペンを止めた。

「……続けろ」

「だから、剣を学びたい。師匠みたいに、“折れない剣”を振る人の隣で、武器を作りたい」

 鶏が鳴いた。間が空いた。

「……動機は?」

「父です」

「ゴヘイか」

「はい。父は、剣を作るために人生を使いました。

 でも……壊れたんです。心も、剣も」

 マイは笑った。無理に、でも真っ直ぐに。

「だから、私は壊れない武器を作る。壊れない剣士のそばで」

 レイは短く頷いた。

「装備は?」

「今は、父の工房の道具と、魔神の戦槌……の系譜です!」

「“系譜”って便利な言葉だな」

「はい!」

「生活」

「朝は鍛冶、昼は鍛冶、夜は鍛冶!」

「休め」

「休みは……考えます!」

「考えるな。取れ」

 レイはメモを書いた。

 ――マイ:過労注意。

「私生活」

「師匠の家に住めて最高です!」

「それは私生活じゃない」

「じゃあ、料理は苦手です!」

「正直でよろしい」

 次、とレイは顔を上げた。

「アーモンド」

「はい」

 アーモンドは、姿勢を正したまま、静かに息を整えた。

 騎士の癖だ。面談でも戦場でも変わらない。

「目的」

「強くなることです」

 即答だった。

「具体的に」

「誰かを守れる強さ。

 剣だけではなく、判断と責任を含めて」

 レイは頷いた。

「動機」

「父です」

「……ああ」

「父は、剣では勝ちました。

 ですが、守れなかった。だから、私は……」

 言葉が途切れた。アーモンドは拳を握り、すぐにほどいた。

「勝つためではなく、守るために強くなりたい」

「装備」

「現在はロングソードと大盾。重装鎧。

 ……正直に言えば、機動戦は苦手です」

「自覚があるのは良い」

「師匠の動きを見て、世界が違うと知りました」

「生活」

「規律があれば問題ありません。早寝早起き、掃除当番、警備――」

「村民、鶏と牛だぞ」

「……鶏の警備も、任せてください」

「頼もしいのか微妙だな」

「私生活」

 一瞬、アーモンドは詰まった。

「……剣以外、あまり」

「趣味は?」

「……地図を描くことです」

 レイのペンが止まった。

「ほう」

「移動、補給、地形。考えるのが……好きです」

「それは趣味としては有能すぎる」

 面談は、コーヒー三杯分続いた。

 レイは手帳を閉じ、二人を見た。

「結論」

 二人が息を呑む。

「弟子として、受ける」

「「はい!」」

「ただし――」

 レイは指を一本立てた。

「ここは前線じゃない。

 剣も鍛冶も、命を削るが……生活を壊すな」

 マイは頷き、アーモンドは深く頭を下げた。

「まずは――家を増築する」

「やっぱりですか!」

「設計、今日中に出します!」

「俺はコーヒーを飲む」

 剣聖は静かに立ち上がり、縁側から空を見た。

 弟子が増えた。

 騒がしくなった。

 ――悪くない。

「……さて」

 レイは呟いた。

「本当に、忙しくなるな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ