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マイアーモンドクリーム----コーヒー好きな剣聖は今日も弟子を鍛えます---  作者: イサクララツカ


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16話 二刀魔法

夜の庭は、もはや庭ではなかった。

 空気が歪み、地面が軋み、魔力が風のように渦を巻いている。

 マイとアーモンドは、言葉を失っていた。

「……ねえ」

「なに」

「これ、剣術と魔法の稽古だよね?」

「うん。

 世界破壊の前座にしか見えないけど」

 二人の視線の先――

 剣聖レイと、エルフ女王ニベアは、完全に呼吸を合わせていた。

 ニベアが一歩前に出る。

 賢者の杖を軽く振り、詠唱はない。

「付与、開始」

 レイの右手の剣に、青白い炎が宿る。

 それは熱を持たない、魔力だけの炎――魂を焼く剣。

 左手の剣には、凍てつく刃。

 空気が悲鳴を上げ、霜が刃から滴る。

「さらに――」

 ニベアは一瞬も止まらない。

「筋力、反応、出力、全部二倍」

「……了解!」

 レイの身体が、軋む音を立てた。

 人間の限界を越える負荷。それを承知で、剣聖は笑った。

「行くぞ!」

 踏み込み。

 渾身の一撃。

 炎と氷を纏った二刀が、交差するように振り抜かれる。

 だが――

「甘いわ」

 マリアは、静かに動いた。

 バスターソード。

 その巨大な剣を、横薙ぎ一閃。

 ドンッ!!

 衝突音は、爆発だった。

 レイは、剣ごと吹き飛ばされ、地面を削りながら後退する。

「レイ!」

 ニベアが叫ぶより早く――

 マリアの魔力が、庭全体を覆った。

「――《グラビア》」

 重力魔法。

 世界が、下へ引きずられる。

 膝が沈み、呼吸が重くなる。

 骨が悲鳴を上げる圧力。

 だが。

「――無効化」

 ニベアは、即座に杖を振った。

「《マジック・キャンセラー》!」

 重力が、霧散する。

 マリアが、くすりと笑った。

「やるわねぇ、ニベアちゃん」

 その瞬間――

 マリアの瞳が、ほんのわずかに開いた。

 レイは、本能で悟った。

(――ヤバい)

 考えるより早く、身体が動く。

 レイは一気に距離を詰め、

 ニベアを抱き寄せた。

「えっ、ちょ――!」

「飛ぶぞ!」

 そのまま、跳躍。

 レイはニベアを抱いたまま、全力で空中へ逃げた。

 次の瞬間。

 マリアがいた空間が、歪んだ。

 圧縮された魔力が解放され、

 そこにあったはずの空間が――弾け飛ぶ。

 地面が抉れ、木が消し飛び、

 衝撃波が夜空へ突き抜ける。

 静寂。

 レイとニベアは、着地し、

 二人とも肩で息をしていた。

「……死ぬかと思った」

「同感よ……」

 ニベアの指先が、わずかに震えている。

 それでも、瞳は真っ直ぐだった。

 その前で。

「失敗、失敗」

 マリアは、楽しそうに笑っていた。

「うっかり薄目を開けちゃった」

 そして、ぱちりと目を閉じ直す。

「約束通り――

 あなたたちの勝ちよ」

「……マジですか」

「ええ」

 マリアは、優しく、誇らしげに微笑んだ。

「二刀と魔法。

 ちゃんと“並んで”戦えていたわ」

 その言葉に、ニベアは胸を押さえ、

 小さく息を吐いた。

(……認められた)

 マイとアーモンドは、しばらく沈黙し――

 同時に、同じことを思った。

「……魔王より強くない?」

「うん。

 ラスボスが師匠ってやつだね」

 夜風が、静かに庭を撫でる。

 剣と魔法が交差した夜は、

 まだ、終わっていなかった。

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