最初のレポート
よし、最初のレポートの内容を確認してみよう。頁を戻してあたためてタイトルを確認すると、そのタイトルは英文でRelationship between myth and truth、日本語で「神話と真理の関係」となっていた。この膨大なレポートの始まりは、神話学研究所が作成した神話に関するレポートであることがわかった。詩は、茶室の中の図書館にあった神話学入門の書籍を想い出した。
この最初のレポートは4頁と比較的短いものだったが、レポートの構成自体は、まさに立派な研究論文のようだった。大学時代にいっちゃんが作成していたレポートの書式と同じだ。レポートの項目を列挙すると、以下のようになっていた。
Abstract:概要
Introduction:背景
Search results:調査結果
Discussion:考察
Conclusion:結論
References:参考文献
レポートはレター形式で学会に提出する様式に構成されていて、論文の体裁になっていた。彼はこのレポートを正式にどこかに提出しようとしていたのだろうか。
最後の頁にある参考文献の名称を確認すると、詩が収納ケースに所持している見慣れた書籍ばかりだった。段ボール箱が自宅に届いた時に読んだ神話学入門の本もその参考文献のリストにあった。そうか、あの書籍にあった付箋って、暗証番号のヒントとかではなくて、このレポートへの引用箇所なんだ。
だとすると、貸金庫に行くまでにその内容をずっと確認してきた私にとって、このレポートの内容を分析するのは、そんなに難しいことではないのかも知れない。
実際に、最初のレポートを確認したところ、既に付箋の内容を知っていたので、理解することが困難ということはなかった。そのレポートが伝えていることは、神話学者の研究から、世の中に伝わる伝承には、神話、伝説、昔話の3種類があり、その内、神話とは絶対的な真実と信じられている伝承であるということであった。
ただ、最後の結論の項目で、真理の追究にはこの絶対的な真実である世界各国の神話を調査する必要があるということを精力的に記載している点が、真理を追及する神話学研究所のレポートらしいと詩は思った。
確かに、このレポート以降にファイルされている他のレポートは各国の神話に関するものも多かった。エジプトの神話、メソポタミアの神話、中国の神話、インドの神話など、四大文明を意識したものだろうか、タイトルを見ても興味をそそられるもので、決して専門的な学術論文というような感じはしなかった。
安堵感が身体に広がっていくのを感じた。長い旅路に出てやっと懐かしい自宅に辿り着いた旅人って、きっとこういう気分なのだろうと思った。詩は今、ようやくいっちゃんに繋がった気がした。
詩は、深く息を吸い込んでリビングチェアに深く座り直し、テーブルにある2つのファイルと収納ケースを見渡した。ようやく、これらの膨大な文書全体の体系が理解できた気がした。




