芽依ちゃんからの連絡
ねえ、いっちゃん、私はどうすればよいの?
そのとき、スマホに通知が入った。芽依ちゃんからメッセージの着信だ。「どうだった?」の文字と可愛いうさぎのスタンプ。先週会った時に今日のXデーのことは伝えていたので、気になってメールしてきてくれたのだ。大切な親友が心配してくれているのに、すぐに連絡しなかったことを、詩は申し訳なく思った。
もちろん、伝えたいことは山のようにあった。少し内容を整理してから連絡しようと思っていたのだが、取り合えず、芽依ちゃんにここまでの現状を伝えておこうと思った。ただ、メール文を作成し出した瞬間から、とてもメールでは伝えきれない内容だと感じたので、電話で話せるかどうかを問い合わせてみた。すると、今なら大丈夫とのことだったので、折り返し芽依ちゃんに電話を入れた。
「芽依ちゃん、連絡遅くなってごめんね。」
「こちらこそ、忙しいのにごめんね。今日、Xデーだったよね。どうしても気になってしまって。貸金庫を開けに行った?」
「うん、開けに行ったよ。」
芽依ちゃんが、固唾を呑んでいる様子が電話口でもわかった。
「それで、貸金庫は開いた?」
当然の質問だった。詩は土壇場で暗証番号の数字の順番に苦労したものの、最終的に貸金庫を開けることが出来たことを答えた。
「詩ちゃん、やったね!それで、中には何が入っていたの?」
芽依ちゃんの声のトーンが上がった。
「うん、ありがとう。貸金庫の中には、彼の手紙とファイルが入っていた。あ、青い薔薇のブローチも。少し時間かかるけど、順を追って話すね。時間は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。教えてくれる?」
「もちろんよ、少し長くなるけど聞いてね。」
ここから、詩は芽依ちゃんにリビングテーブルに広げている手紙の内容を説明した。まずは遺言書の内容を話して、何よりも便箋に書かれているいっちゃんのメッセージを詳しく伝えた。
芽依ちゃんは電話口で一言一句、相槌を打ちながら話を聞いてくれていたが、メッセージの後半『僕はこの世界にいます。』の下りになると、沈黙した。
「ねえ、芽依ちゃん、この言葉ってどう思う?」
ずっと静かに聞いてくれていた芽依ちゃんもこの思わぬ展開に、少なからず驚いた様子で短く答えた。
「ごめん、私もわからない。」
詩は思わず、一番聞きたかったことをテーブルの上の手紙を見つめながら問いかけてみた。
「私への慰めの言葉なのかな?」
すると、芽依ちゃんはこう答えてくれた。
「いや、違うと思う。単なる慰めの言葉なら、いっちゃんはここまでしないと思う。もし、そうなら最初の実家に遺した手紙に書けばよいことだから。」
「ありがとう、芽依ちゃん…」




