貴重な情報
期待していたとはいえ、十分な説明もなく、普通ではあり得ない内容を一方的に伝えてくる文面に、詩は戸惑った。
世界の真理?
それって、どんな方法?
いろんな疑問で頭がいっぱいになった。
『これは、とても貴重な情報なので、この貸金庫に入れて保管しました。詩ちゃんには知っておいて欲しいので、その情報をここに遺しました。』
貴重な情報…
詩は、リビングテーブルにあるファイルに目をやった。2冊ある水色のファイルの内、比較的薄い方のファイルを最初に手に取った。
ファイルの背表紙に記載されたアルファベットのタイトルは、「Wahrheit」。
テーブルに置いてあるもう一つの分厚い方のファイルのタイトルを見ると「Bericht für die Wahrheit」とあった。
これらは、文字から判断して英語ではないことを理解した。スマホを取り出して、ネットで単語の意味を調べると、いずれもドイツ語であることがわかった。
早速、翻訳ソフトで日本語に変換してみた。
「Wahrheit」は「真理」
「Bericht für die Wahrheit」は「真理のためのレポート」
という意味であることがわかった。
真理…
このファイルに、来世も一緒にいる方法が記載されているんだ。彼は、一体何者なのだろう。予測もしていない展開に詩はついていけなかった。
来世も一緒。死でさえも二人を引き離すことは出来ない。とても嬉しい言葉だけど、来世っていつのことを言っているのだろう?もしかして、今世でなく来世ということは、私も死なないと会えないという話?そんな素朴な疑問が生じた。え、それは困る。
そんなことを考えながら、手紙の文章を読み進んだが、そこには更にあり得ないことが書かれていた。
『順調に進んでいれば、詩ちゃんがこの手紙を読んでいる頃には、僕はこの世界にいます。』
え!彼がこの世にいる?どうして?
彼の言葉に驚かされるのは、もう何回目だろう。
だけど、この話はすぐには信用できなかった。
そのくらいの冷静さは残っている。お通夜で彼の遺体を見て泣いた。逆縁だから立ち会わなくて良いと言われたが、火葬場で骨になるのも見守った。だから、この世にいることは絶対ない。私を慰めているつもりだろうか、そうだとしたら酷いし、私はこの先、立ち直れない。
『ただ、会いに行ける状況になるまで少し待っていてください。待つ間、可愛い使者がコンタクトしてくれるので、優しく出迎えてください。』
新たな謎が深まった。
『僕はいつも、詩ちゃんの傍にいます。樹』
手紙の最後には、見慣れたいっちゃんの署名があった。




