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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第4章

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遺言書と手紙

 そうか、確かに私は婚約者だったけど、家族ではない。実家のご両親は、家族同様に扱ってくれているが、結局、家族になれなかった私は、法律上の相続人ではない。まだファイルの中を見たわけではないが、いっちゃんの遺品を受け継ぐのは、法定の相続人のはずだ。


 だとすると、家族とトラブルにならないように、いっちゃんはこうして遺言書を書いておいてくれたのかなと推察した。ご丁寧に貸金庫を開ける権利まで記載してくれている。もし、貸金庫のサービスをしている会社からどうして私が金庫を開けたのかと追求されたときに、この遺言書は有効かも知れない。さすが、どこまでもリスク管理が徹底している。


 これは後で確認したことだが、本人の死後、その財産を誰かに引き渡す方法には、相続の他に遺贈という方法があって、相続人以外の人にも財産を譲りたい場合にはこの遺贈、つまり遺言書によって他人に無償で財産を譲る方法を使うらしい。譲渡とは違って、相手の同意は不要らしい。確かに、彼から私は何も聞いていない。今回は、これらのファイルを彼の死後に私に譲る手法として、この遺贈の方法を使っていることが、後日わかった。こんなとこまで検討しているなんて、彼は弁護士にでも相談したのだろうか。


 遺言書を確認した後は手紙だ。一体、何が書いてあるのだろう。少しドキドキした。

 

 意を決して、手紙を手に取ってみる。

 冒頭の一行は、私に大事なことを伝えるときの呼びかけの文章だ。

 『Dear my sweet better half, Uta-chan,』

 

 二人揃って始めて完全な人間になれるという人間球体説。その意味を込めたmy sweet better half。完全数の要素をパスワードにした理由は、この文章からも理解できる。私にしかわからない暗証番号というのは、今更ながらこういうことかと納得した。


 その次の行には、驚くべきことが書かれていた。

 『ついに、僕は来世もずっと詩ちゃんと一緒にいることができる方法を発見しました。』


 え!

 いきなり何を言っているのだろうと、詩は思った。と同時に、プロポーズのときの『来世もずっと一緒にいようね。』という言葉を想い出した…


 いっちゃんは、もしかして来世も一緒にいることが出来ると、あのとき確信したので、私にプロポーズしたのだろうか。そういえば、彼は出来ないことは約束しないとよく言っていた。出来ないことを約束すると、他人に対して無責任になるからだからだと。


 その彼が、私に見たことのない世界を見せると約束したんだ。そして、その約束を果たすために、ベテルギウスをパスワードにして私へのメッセージを記録し、貸金庫に導いたんだ。私との約束を果たすために、こんなにも手の込んだ方法を使って。


 そう思うと、彼が遺言書を書いていた気持ちも理解できる。ついさっき、不信な気持ちを感じた自分が恥ずかしくなった。


 さらに、便箋には更に文章が続いていた。

 『それは、この世界の真理を知ったものだけが使える方法です。

その方法を使うと、もはや死でさえも二人を引き離すことは

出来ないことがわかりました。』

 


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