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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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Xデー

 今日はXデー。ベランダの窓を覆うカーテンを開くと、晴れやかな青空が広がっていた。リビングのテレビニュースが今日の星占いの内容を伝えていた。気になって見てみると、私の星座は一位だった。幸先が良い。そう、いよいよ貸金庫を開けに行く。今日はその決行日だ。


 港町はお洒落な町だ。朝から洗面所の鏡の前で入念にメイクをし、彼にデートのときに着て褒められた想い出の春用のワンピースに、薄いジャケットを羽織った。リビングの壁に立て掛けている姿見の鏡で、コーデのバランスをチェックした。


 先日、芽依ちゃんも太鼓判を押してくれたし、暗証番号は合っていると信じているが、本当に大丈夫なのかやはり不安だ。4回間違えるとロックがかかって永遠に開錠できなきなくなる。


 そもそも、貸金庫の名義は私ではないし、何度も間違えていると不審者だと思われて連行されるかも知れない。実家の両親に通報でもされたら、おしまいだ。そんな不安が頭をかすめた。でも、ここまできたのだから、行くしかない。いっちゃんも、それを望んでいるはずだ。


 バッグは貸金庫に書類が入っていたときのことを考えて、少し大き目のショルダーバッグにした。カード入れには貸金庫のカードを入れて、貸金庫の鍵はお財布に入れた。よし、準備はできた。


 朝ごはんに食べたレモン味のヨーグルトのカップとスプーン、そして紅茶のカップを片付けて、玄関を出た。エレベータで1Fに降りて外に出ると、明るい日差しが詩を包んだ。


 最寄りの駅から乗り継いで、港町に向かう急行電車に乗り換える間も、ずっと今日の手順を考えていた。常に最悪のことを考えるのがリスクマネジメントといういっちゃんの言葉を想い出した。想定出来る最悪の事態は、暗証番号が予想と違って不審な動きをして、警備員に連れていかれることだ。


 その場合は、潔くいったん家に帰ろうと心に決めた。まだ、残り3回は入力のチャンスがある。芽依ちゃんにも相談して、もう一度、一から番号を検討してみよう。ここまで考えが纏まった瞬間、少し心が落ち着いた。万一の場合も、落ち着いた行動がとれる気がした。


 そんなことを考えながら、乗り継いだ電車の窓を通して、進行方向から流れる外の風景を見ていると、やがて目的の駅についた。訪れたことがない場所なので、もう一度、スマホでマップを確認し、駅から貸金庫までの道のりを検索した。


 スマホ画面を覗きながら、週末の観光客が多い駅ビルを抜けて、屋外の道を少し歩くと、そこに目的地のビルがあった。


 さあ、ここだ。ビルに入って1Fロビーの案内板を見ると、2Fに目的の場所である貸金庫の表示があった。ロビーにあるエレベータで2Fに上がって、フロアマップを確認して該当する場所に歩いて行くと、ドアの上部に会社名と貸金庫室と書かれた扉があった。


 その扉の横にはカードを挿入するカードリーダーが付いている。緊張感が高まった。何度もネットで確認した利用者向けの案内情報を想い出しながら、ショルダーバッグからカードケースを取り出した。中から貸金庫のカードを取り出して、その機械にカードを差し込む。


 「カチャ!」


 機械音がして、扉が開錠されたことがわかった。


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