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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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ゆず入りの紅茶

 午後にも休憩を入れた。頭を使ったので、甘いものが欲しい。いつものように、瓶詰のハチミツ漬けのゆずをスプーンで掬って紅茶カップに入れ、その上からティーサーバーに残っている朝の紅茶を注いだ。既に冷えているのでレンジで温めてみる。おやつにスーパーで買った袋入りのチョコレートを取り出した。


 最後の本の内容から、六芒星が完全数6と関係することは分かったが、詩の気分は晴れなかった。全ての書籍の探求を終えたが、今日は記念日にはならなかった。期待していた宝くじは当たらなかった。


 これからどうしようか。紅茶カップの底に沈んだゆずをスプーンで混ぜながら、詩は考えを巡らせたが良いアイデアは思いつかない。こういうときは、切り替えが大事だ。他のことをしよう。そう思って、洗濯物の取り込みや夕飯の準備、部屋の片付けなどの家事をこなしていった。


 結局、取り出した本をFI/6のラベルを貼り付けた収納ケースに詰め、リビングにあった最後の段ボール箱をゴミの日に資源として出せるように折り畳んだのは夜遅くだった。気合を入れて迎えた大型連休の初日が終わる。明日からどうしよう。


 気を取り直して、フォルダに遺されていたいっちゃんのメッセージを印刷した用紙をあらためて戸棚から取り出してみた。意味がわからないと思っていた文章が、今の知識ならわかるかも知れない。そう思って、リビングのテーブルにその用紙を拡げてみた。


 『ねえ、詩ちゃん。このフォルダにアクセスしているということは、そういうことだよね。

 『僕は、これから詩ちゃんが見たことのない景色を見せると約束した

よね。』


 最初の二行は、口語口調で語りかけてくるもので、特に謎めいた箇所はなかった。


 『これから一生をかけて、僕が知る世界の全てを詩ちゃんに知って欲しいと思ったから、そう約束した。』

 『だけど、それがすぐに叶えられなくなったときのことを考えて、ここにその約束を果たすためのメッセージを記録しました。』


 いっちゃんの知る世界、全てではないかもしれないけど、既に書籍で確認したよ。詩はそう思った。

 

 『なので、まずはここに記載した情報を全て受け取って欲しい。』

 『そして、その内容を理解した後に、神々の時代から受け継がれている大切なものを受け取って欲しい。』

 『詩ちゃんが今まで見たことのない世界への扉が見つかるから。』

 『そこにあるのは、大切なものを保管している貸金庫の鍵。』


 この4行は貸金庫に辿り着くためのステップを表している。最初の一行目が意味する全ての情報とは、各ファイルの参考文献のことだ。なので、その書籍を実家から受け取った。

 次の2行目はその書籍の内容についての理解が必要だということだ。その意味では、貸金庫に辿り着けないということは、まだ私の理解が足りないということか…

 ただ、そう言われても、困ってしまう。


 その後の文章は、貸金庫がネット口座で運営されているとか、扉を開くまで時間をかけてもよいとかの説明なので、ここは問題ではないと思ったが、『詩ちゃんだけが見つけることのできる暗証番号』という言葉は気になっていた。

 


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