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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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朝ごはん

 さて、残りの書籍を探求する前に、先に朝ごはんにしよう。今日は、冷蔵庫の野菜室にある余ったレタスでサラダを作ってバターとハチミツを塗ったトーストを作ろうかな。その前にお湯を沸かして、ティーサーバーにたっぷり紅茶を淹れておくことにしよう。そんなことを考えながら、詩は春の日差しの差すリビングからキッチンの方に移動した。


 今日は、哲学者と宗教学者の日だ。いつもよりも落ち着いた気持ちで、この世界のことについて思考を巡らせてみよう。そして、暗証番号の謎を解いてみよう。そろそろ、いっちゃんが遺してくれた貸金庫の中身が知りたい。見たことのない世界の扉を開いてみたい。

 

 大型連休はまさに始まったばかりだ。この書籍の調査のために、菜美ちゃんとの約束は5日後、里帰りの予定は7日後に入れた。まだ、たっぷり時間はある。実家に帰るための特急電車の予約など、いろんな段取りを先に済ませながら、最後の段ボール箱に入っている書籍をこの連休中にゆっくりと探求していこうと思った。

 

 今日を暗所番号発見の記念日にしたいという気持ちを表すために、特別なときに使おうととっておいた有名な外国ブランドのティーバッグを湿気防止のための紅茶缶から取り出して、ティーサーバーに入れ、熱湯を注いだ。


 ティーバッグから染み出す淡い紅茶の色合いを耐熱ガラス越しに、しばらくの間、ぼんやりと眺めていると、やがてオーブンレンジのグリル皿にセットしたトーストの香りがキッチンに漂ってきた。


 最後の段ボール箱探求への期待が高まった朝だった。

冷蔵庫にある余ったレタスで小さなサラダも付けてみよう。



 準備した朝ごはんを美味しく頂いて、キッチンで食器を洗っていると、今度は洗濯が終了したことを知らせる発信音が洗面所の方から聞こえてきた。すぐにでも書籍の探求を始めたい気持ちでいっぱいだったが、その焦る気持ちを抑えて、先にベランダに洗濯物を干すことにした。今日は快晴ではないが、春の柔らかな日差しがベランダに降り注いでいる。洗濯物を干すには悪くない天候だ。


 洗濯籠を手に取って、ベランダに出る掃き出し窓を開けながら、先日の芽依ちゃんがポルックスの話しを想い出した。あれ以来、詩もパスワードになっている星のことが気になっていた。もしかして、パスワード自体に暗証番号の秘密が隠されているかも知れないと考えてみた。


 シャツやアンダーウェアなどの洗濯物をそのサイズに応じて、樹脂製の洗濯用ハンガーや洗濯ばさみを使って、ベランダの物干しに順番に吊るしていきながら、詩は冬のダイアモンドを構成する星に想いを巡らせた。


 パスワードになっている星として、まずは『ベテルギウス』があった。これは私を意味する星だ。だから、ガイダンスのファイルに使用している。そして、冬のダイアモンドの中心の星として、残りのパスワードのヒントを与えている。


 次に、ダイアモンドの最初の星として、先行するものを意味する『プロキオン』があった。その次にオリオンを導く星としての『シリウス』、そしてオリオン座の『リゲル』。いっちゃんを意味する星はダイアモンドの3番目だ。そして、4番目は、後を継ぐもの『アルデバラン』だ。ここまでは、星の伝承を踏まえた並びとして理解できる。


 ただ、その次のカペラにはどういう意味があるのだろう。洗濯物を干す作業が一段落したので、ベランダに続く窓を閉めてから、先日来リビングに置いてある収納ケースの前に移動した。


 星のことは、FI/3天文学研究所だ。そして、星座に関する神話は、FI/1神話学研究所だ。研究所毎に書籍を収納ケースに整理しておいたおかげで、すぐに探したい本が見つかる。


 早速、カペラに関する天文学の本と神話の本を調べてみると、カペラはぎょしゃ座の一等星で、ギリシャ神話ではアマルティアと呼ばれる牝山羊もしくはその山羊を所有する精霊を象徴する星であることがわかった。興味深いのは、そのアマルティアはあの大神ゼウスの育ての親であるという。


 いっちゃんを天界に連れ去ったゼウスの育ての親カペラ…

 そして最後は、死を乗り越えて、愛する兄弟と一緒に暮らしたポルックス…


 詩の思考が空間を漂った。少し時が止まった気がした。


 いっちゃんは全てを知った上で、何かの意味を込めてこれらのパスワードを設定している気がする。


 今日、開封した段ボール箱はポルックスに相当する書籍が入っている。いよいよ、この一連の謎が解き明かされる気がする。詩はそう思った。


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