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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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収納ケース

 翌日、会社から帰宅すると、管理人さんからのメッセージがあり、荷物が届いているとのことだった。1階の管理人事務室に行くと、注文していた収納ケースだった。一度で運べる数ではなくて業者みたいな量だった。


 「台車要りますよね?」

 管理人さんが今回も親切に提案してくれたので、お言葉に甘えて台車を借りてフロアを往復することにした。2回目の台車での運搬のときに、アパートの住人と思われる人がエレベータに乗り込もうとしてきたので、申し訳なさそうにお辞儀をした。ここは大きなアパートなので、普段は話をしない人もたくさん住んでいる。その人も顔見知りの人ではなかったので、荷物の量を見て、乗るのを遠慮したみたいだった。


 何度か台車で往復した後、届いた荷物を開封して、リビングに合計6個の収納ケースを並べた。その6という数は、段ボール箱の数に合わせたのが大きな理由だったが、そもそも六芒星だからというのも理由の一つだった。事前にサイズは図っていたので、書籍の大きさとも合致するはずだったが、念のためにリビングに積まれている書籍を入れてみると、ピッタリで安心した。


 明日からの週末に備えて、今日は夕食後にこれまでに取り出した書籍を収納ケースに整理していこうと思った。冷蔵庫から冷凍餃子を取り出しながら、これまでの研究所名を想い出した。


 神話学研究所:FI/1

 天文学研究所:FI/3

 宇宙物理学研究所:FI/4

 人類学研究所:FI/5

 言語学研究所:FI/6


 まだ、未開封の段ボール箱があるが、既にこれだけの研究所の書籍を確認したことになる。ただ、暗証番号の情報はまだ発見できていない。本当にこの書籍の内容を確認すれば、暗証番号が判明するのかどうか不明なのだが、今はこの作業を続けるしかない。


 フライパンに冷凍餃子を並べて、餃子を羽根つきにするための薄力粉を小さな器に溶かす。ネットで勉強した冷凍餃子の焼き方のコツを試してみる。どんな料理もひと手間を加えると、見た目も綺麗になるし、味も美味しくなると、いっちゃんが言っていた。


 彼は料理も得意で、私の食べたいものをよく作ってくれた。特にヨーロッパの料理が好きだったみたいで、フランス料理、イタリア料理、スペイン料理、ドイツ料理の中から代表的なパエリアやパスタ料理などを私のこの家で作ってくれた。


 家庭で作れないような珍しい料理は、外に食べに連れていってくれた。ベルギー料理、スイス料理、ポルトガル料理、ロシア料理に加えてギリシャ料理のお店にも行った。段ボール箱に書籍こそはないが、これはどうやって作っているのだろうとか食べながら呟いて、料理を仕事にしているシェフか料理研究家みたいだった。


 そういえば、料理も各国の文化なんだとも言っていた。それぞれの国の言語が違うように文化も違うんだよと言っていた。この書籍を見ていると、いっちゃんの好奇心の源泉がわかる気がする。彼は本当に、この世界の全てを知りたかったのだと思う。誰かと競っているとか、地位を得たいとか、お金儲けをしたいというような考え方は彼にはない。彼は純粋に全てを知りたいんだ。


 科学者の統一理論の夢を想い出した。いっちゃんは学者ではないけれど、彼はこの社会の現象を全て理解しようとしていた。それだけは確かだ。ここにある書籍の数がそれを意味している。どれも学業や仕事をする上で必要な知識とは思えない。


 でも何のためにだろう。『君に見たことのない世界をみせる。』まさか私のために?そんなことを考えながら、レンジの火を止めた。


 フライパンにお皿を被せて、焼きあがった羽根つき餃子をフライパンごと、ひっり返して皿の方に盛った。茶色の焦げ目がついた餃子に綺麗に羽根がついていて、美味しそうだった。小皿に市販の餃子のたれにラー油と七味を加えた特製たれを作って、リビングテーブルに移動した。椅子に腰かけて、出来立ての熱々餃子を一口食べてみる。生姜味も効いていて、ご飯がすすむ味だった。


 食べ終わって洗い物をして、ベランダに干していた洗濯物を取り込んで畳んでいると少し遅い時間になったので、書籍の整理は明日の休日にすることにした。今日は無理しないで、ベッドの中でいっちゃんの想い出に浸りながら、早目に寝ようと詩は思った。


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