北川さんとの面談
今朝は早起きをして、明るい色のファンデを使ったメイクをして会社に出勤した。春先に似合う淡い色合いのスカートと襟付きの白いシャツのコーデに薄い生地のジャケットを羽織って、会社のビルへと向かう。今日は、久しぶりに本社部門の人事担当の北川さんと面談だ。職場に到着した後、早くから出社していた美紀先輩に挨拶をしてから、同じフロアのオフィスの中の会議室で北川さんが来るのを待った。
会議室の窓にはブラインドが降ろされていて、蛍光灯の照明が室内に降り注いでいる。最近、企業でも情報漏洩の対策に向けたセキュリティが厳しくなり、新年度からオフィスの中の会議室の窓も閉めた状態で会議することになったらしい。カメラの精度も向上して、隣のビルからも会議室内の様子が見えるらしいからだと言うのだが、そんな映画みたいな産業スパイって本当にいるのかなと思う。
「お待たせしました。遅れてすみません。」
とやがて、北川さんが、私が先に到着していることに気を遣って、謝りの言葉を口にしながら部屋に入ってきた。今回もまだ約束の時間にはなっていないのだが、相変わらず人事の方は丁寧だ。
今日の会合は、復帰後の様子を伝えるためのもので、職場の松野さんを通じて設定したものだった。私からは、あらためて先日の心療内科での診察の結果をお話しした。医師に復帰して一月経過して特に問題はないことを伝えると、もうだいぶ良くなったので定期的な通院は不要になったことを話した。
「それは良かったです。安心しました。順調で何よりです。」
と満面の笑顔で北川さんは話してくれた。今回の件についての会社の対応には本当に感謝している。やむを得ない事情とはいえ、個人の都合で3月以上も休職させて貰った上に、今も仕事の負荷がかからないようにと気遣って頂いている。普通だったら、会社を辞めさせられていても不思議ではなかったと思う。入社前から人に優しい会社とは聞いていたが、本当にこの会社に来て良かった。
「他に何か気がかりなことありますか?」
と問いかけて貰ったが、ここまで親切にして頂いているので、会社に要望するようなことは何もなかった。
どちらかというと、職場の人達にこれ以上、迷惑はかけたくないので、詩は正直な気持ちを打ち明けた。
「復帰以来、職場のみんなに気を遣ってもらって、いつも早く帰宅させて貰っているのですが、少し心苦しいときがあります。元気になったので、以前と同じように忙しいときは残業しても大丈夫です。」
北川さんは、にこっと笑みを浮かべて、こう答えてくれた。
「そう言ってくれて、ありがとう。でも、決して無理はしないでくださいね。業務のことは職場の松野さんと相談して貰えればと思います。何かあったら、いつでも相談にのりますから、遠慮なく連絡くださいね。」
人事の人はどこまでも優しい。そして、北川さんの言う通り、業務のことは松野さんに相談しないといけないと思った。今度、機会のあるときに、松野さんに直接、話をしてみよう。その内にゴールデンウィークがやってくるから、休み明けの勤務のことについて少し相談がありますと言ってみようと思った。




