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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第2章

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芽依ちゃん

 「詩ちゃん、それはどんなマークなの?」オフィス街の地下にある欧風のカフェで古くからの友人、芽依ちゃんが尋ねてきた。そう、今日は休日。お昼の時間に、久しぶりに街に出かけてみた。芽依ちゃんは何でも話せる友人だ。大学時代に働いていたバイト先で知り合い、仲良くなった。


 いっちゃんと三人で食事したときは、「そんな人、よくいたね!絶対に昇りつめてね!」と、心から応援してくれた。だから、いっちゃんが亡くなったとき、家族以外では彼女が一番、心配してくれた。しばらく会っていなかったが、実家に戻った期間も毎日のようにメールで励ましてくれて、本当に感謝している。


 二杯目のアップルティをティーポットから紅茶カップに注ぎながら、今日はあらためて、これまでの話しをした。休職してしばらく実家に帰ったときのどうしようもない頃のこと。最近、同じアパートに戻ってきて独りで社会復帰に向けて暮らしていること。そして、先日、いっちゃんの実家に行ったこと。芽依ちゃんに手紙の話しをすると、とても興味を持ってくれて、まだ開封もしていない封筒の話しに花が咲いた。


 尋ねてきたマークとは、手紙を封じている星のしるしのことだ。三角形を上下に組み合わせた形になっていて、尖った部分が6つある。テーブルにあったペーパナプキンにそのしるしをペンで書いて、芽依ちゃんに見せると、彼女はそのしるしをじっと見つめて「六芒星ね。」とつぶやいた。


 「ろくぼうせい?」と聞き返すと、「そう、六芒星。知性の象徴。調和と完全のシンボル。」といきなり詳しい話をしてくれた。「私、紋章とかの話しが好きなのよ。それで昔、調べたことがあるの。」と戸惑う私に説明してくれた。


 「いっちゃんらしいな。知性の象徴か。」と私が漏らすと、芽依ちゃんはしばらく考え込んで、「三角形を二つを組み合わせた六芒星は、男と女、精神と肉体、天と地、神と人などの融合を意味しているから、完全とか調和の意味があるの。そこから派生しているのだと思うけれど、相手を護るしるしと言われているの。」と言った。


 「きっと、いっちゃんは、天国から詩ちゃんを護っているのよ。」と芽依ちゃんが言ってくれた。まだ開封もしていないのに、封筒のしるしだけで彼の気持ちがなんとなく想像できた。こうなることも想定して、天国から慰めようとしているのだろうか。


 そう考えると、手紙の内容が想像できた。きっと、天国で見守っているよとか、そんなことが手紙に書いてあるのだろう。でも、いっちゃん、そんなことは余計に辛くなるから止めて欲しい。残された私にとって、その優しさは残酷でしかないよ。


 やっぱり、今は開封するのは止めておこう。もう少し時間が経ってからにしようと詩は思った。


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