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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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言語のこと

 その日のお昼に実家に電話で連絡を入れた後、午後から会社に行き、上司の松野さんにも診察の結果を簡単に報告しておいた。母親も松野さんも順調に回復していることを心から喜んでくれた。周囲が喜んでくれると私も嬉しい。今は素直にそう思える。元気になったことを実感するって、こういうことなのかも知れない。


 今日は、夕食後に紅茶を淹れてみた。瓶入りの容器に入ったハチミツ漬けのゆずをティースプーンですくって、紅茶のカップに溶かしながら、リビングにある段ボール箱を眺めた。ここはまるで、古代遺跡の発掘現場のようだ。


 考古学者になった気分でまた新しい段ボール箱を開けてみた。今度の箱の中には各国の言語に関する本と文化人類学という本が入っていた。ここは、言語学研究所FI/6、パスワードはカペラと、人類学研究所FI/5、パスワードはアルデバランのコーナのようだ。


 特に数多くの書き込みがあった本は、民族の世界地図と文字の世界史という世界の民族や言語を体系的に纏めた本だった。前者は世界の神話の体系を纏めた神話学のような本、後者は星座の起源のような本だなと思った。


 いっちゃんの本を見ていると、いろいろと勉強になる。民族の体系なども考えたことなかったが、言語による分類があるみたいだ。確かに日本人は日本語を話すし、中国人は中国語を話す独自の民族だ。この本によると、世界の言語は約6000種類あるらしい。夜星に輝く星の数、空の人間が一生の内に出会う人の数が5000くらい。ふと、いっちゃんが教えてくれた話を想い出した。どれも、人間が認知できる数って数千くらいなんだなと思った。


 それにしても、何事にも関心を持って一生懸命にその興味のある物事を追及する彼に、どうしてそんなに頑張れるの?と聞いたことがある。そのときの彼の答えは、こうだった。


 「せっかく、この世界に生まれたのだから、知りたいことを全て知りたいと思わない?」


 向上心が高い人だなと思ったが、これほどとは思わなかった。この段ボール箱の本だけでも膨大な情報になる。いろんなことを知るのは楽しいけれど、実際に調べようとは思わない。

 『僕は変わり者だから。』確かにそうだ。普通の人とは全然、違う。魔法が遣える人は変わっている。こんな人は他にはいない。だから、今も好きなままだ。


 私も言語のことを探求してみようと思い、リビングテーブルの方に向かい、少し冷たくなった紅茶を口にした。該当箇所を読み進むと、言語の系統としては20くらいに別れるらしい。インド・ヨーロッパ語族というのが著名で、英語、ドイツ語、フランス語といった欧米の言語はここに属する。中国語はシナ・チベット語族、他にも、セム・ハム語族というのがあって、エジプトやリビアなどの北アフリカから中東のアラビア語に至る言語が属するらしい。


 ここで、いっちゃんが下線を引いた文章が気になった。セムとハムはノアの箱舟で有名なノアの息子らしい。


 『ノアの箱舟にのってでも』

 いっちゃんがメッセージに遺した文章の中の言葉と重なる…

何か関係があるのだろうか。暗証番号の秘密につながっているのだろうか。今はまだわからないが、ノアの箱舟の洪水の話しが言語と関係しているとは知らなかった。


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