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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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心療内科の受診

 復帰後一月が経過したので、会社勤務をフレックスの扱いにして貰って、週明けの午前中に心療内科に行った。体調が良くなっても、しばらくの間は定期的に受診することを先生と約束していたからだ。実家の方にも受診の結果は連絡しないといけない。もちろん、会社の人事や上司の松野さんには、復帰後も当面の間は通院が必要なことは理解して貰っている。


 詩の順番になり、何度も訪れたことのなる馴染のある落ち着いた雰囲気の診察室に入った途端、先生が温和な表情で声をかけてくれた。この先生には本当にお世話になっている。家族ではないが、いまや身内のような存在だ。

 

 「湖嶋さん、その後、いかがですか?」

 「はい、おかげさまで気分はよいです。」

 「それは良かったです。ずいぶんと暖かくなってきて、外はお花も咲く季節になりましたが、仕事以外でお出かけとかしていますか。」

 「仕事以外に遠出とかはしていないですが…」

 と言いかけて、前回の診察後も、彼の実家に行ったことを伝えてみた。ただ、書籍のことや弟さんのことなど、詳しい話はしなかった。


 「今もご両親とはやりとりされているのですね。」

 「はい。とても優しくしてもらっています。」

 「そう、それは良かったです。良い方々ばかりですね。」


 そう言われて職場の人達を含めて、私は本当に周囲に恵まれていると思った。人生、悪いことばかりではなく、普段は気付いていないだけで良いこともあるのだと思った。この先生と話すと心が温かくなる。さすが心療内科の先生だ。


 その後も一通り、職場の状況などを報告した後、先生はいってくれた。

 「もう、随分と落ち着いてきたようですので、今後は特に問題がなければ、通院も不要かと思います。ただ、季節の変わり目なので、決して無理しないでくださいね。」

 「本当にありがとうございます。先生のおかげで元気になることが出来ました。心から感謝しています。」

 と詩は本心を伝えた。


 「いえいえ、私のおかげとかではなくて、詩ちゃん自身の心の中で何かが変わったのだと思いますよ。私はそれを少しお手伝いしただけです。」

 貸金庫の話しは何もしていないのにも関わらず、先生は何もかもお見通しのようだ。


 「万一に備えてお薬は出しておきますので、何か心配なことがあったりしたら、遠慮なく話に来てくださいね。」

 最後に先生はそう言い残して、診察を終えた。一時は、前が全く見えない暗闇の中にいた。でも今は、心の中に小さな灯りがともっている。この灯りが照らす方向に向かって生きていこうと思った。


 さて、田舎の実家の両親に電話を入れておこう。

 私、もう大丈夫だよと。


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