宇宙物理学研究所
この日以来、帰宅後に夕食を取ってから、書籍を確認するのが日課になった。今日も頑張って、新しい段ボール箱を開けてみた。この箱の書籍は、宇宙物理学研究所の続きだろうか。量子力学に関する本がたくさん入っていた。その中に、難しい専門書ではなく、素人に向けた量子力学の解説本というのがあったので、それを手にした。その本にあった書き込みを読むと、ある程度以上に小さな世界では、もはやどこに何があるかが観測できなくなるとあった。確かに、物が小さくなりすぎると見えなくなる。原子とか電子とか素粒子とか、そもそも人間の目に見えるものではない。
そう考えると、本当にそういうものがあるのかどうかも疑問だが、科学者達はそれらがあるから、この現象はこうなっているのだと説明する。そしてそれらの理論のおかげで、私たちは目に見えない電波を利用してテレビを観たりスマホでメールできるらしい。だとすると、電子や原子があることを認めるしかない。
いっちゃんの書き込みを読んだだけだったが、目に見えない小さな世界にもわからないことはまだまだたくさんあるらしい。原子よりももっと小さいニュートリノとか、どこまで探求しても謎は尽きないみたいだ。
先日の宇宙物理学の話しを含めて纏めると、いっちゃんがいうには、この世界の全てを説明する統一理論を完成させるためには、広大な宇宙のわからないことと、小さな世界のわからないことを全て解明することが必要になるようだ。
広大な宇宙と、目に見えない小さな世界、全く異なる世界のように思えるが、実はお互いにその謎は密接に繋がっているという書き込みがあった。例えば、宇宙の創生の出来事、ビッグバーンというのが象徴的だという。
つまり、宇宙はビッグバーンと呼ばれる目に見えないくらいの小さな点の爆発によって生じたらしいが、そうだとすると広大な宇宙の謎は遡ると小さな世界の謎に起因する。他にも、宇宙にはブラックホールという重力が異常に大きい目に見えない特異点が存在しているらしく、このブラックホールは小さな点にも関わらず、周囲の星や光でさえも吸い込んでしまうらしい。
要は、小さな世界と広大な宇宙の謎は繋がっていて、どちらかの謎が解明されると、もう一方の謎も解明されるようなことが記載されていた。だから、この宇宙物理学のコーナーの書籍を詰めた段ボール箱には、宇宙物理学の本に加えて量子力学の本も入っているのだなと詩は理解した。
いずれにしても、現代の科学ではまだまだわからないことが多くて、それらを知ることがこの世界の謎を明らかに出来ると科学者は一生懸命に研究しているらしい。真理を知りたいという好奇心なのだろうなと詩は思った。なるほど、統一理論の夢は科学者のロマンだ。
昔から難しいことをいっちゃんは、いつも素人にもわかるように解説してくれる。大学時代の授業の際のグループ討論のときもそうだった。この書き込みも、素人の私に説明するときのメモのように思えた。
でもこれを読んでいって、本当に暗証番号がわかるのだろうか。もしかしたら、これらの書籍の知識を私に伝えたかっただけなのかな。それが見たことのない世界だったりして。
いやいや、それだけだったら、こんなに手の込んだことをするはずはない。そもそも、本だけを読ませるのなら、貸金庫はいらないはずだ。詩はそう思い直した。




