表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/105

りっちゃん

 自宅に帰って軽い昼食をとってから、部屋の中を片付けたり、ティーサーバを洗ったりして準備をしていると、インターホンが鳴った。モニタ越しに来訪者を確認すると、心待ちにしていた碧ちゃんの顔が画面に現れた。


 「湖嶋さん、お久しぶりです!荷物を持ってきました。」

以前に会った時と同じアウトドア派のイメージに相応しい快活な口調で、モニタ内でにこやかに挨拶してくれた。


 「はい、今開けます!」と玄関のドアを開けると、日焼けした碧ちゃんの後ろに、ショートボブの髪型がとても似合う彼女が「初めまして」と笑顔で挨拶をしてくれた。二人とも、仲良く両手に段ボール箱を抱えている。箱の中身は見てないが、きっと茶室にあった本が入っているはずだ。


 「お休みのところ、本当に申し訳ないです。駐車場は大丈夫でしたか。あ、荷物はそこに置いといてください。私が中に入れますので。」


 というと、その言葉を待っていたかのように、碧ちゃんが少し汗ばんだ顔で、「はい、ここでよいですか!」と言って持ってきた荷物を玄関先に置いてくれた。彼女もそれにならって続いて荷物を床に降ろした。


 「まだまだ箱があるので、また下に取りに行ってきますね。また、戻ってきます!」と碧ちゃんは言い残して、玄関先に段ボール箱を置いた後、足早に階下の方に戻っていった。


 「わざわざ届けて頂き、本当にありがとうございます。重たいのにすみません。」と詩は、躊躇して玄関に佇んでいる碧ちゃんの彼女に話しかけると、彼女は「いえいえ、このくらい全然大丈夫です。」とぺこりと挨拶をして、碧ちゃんの後を追って階下に向かっていった。


 二人が下のフロアに向かった後、詩は玄関先の段ボール箱をリビングの方に運んだ。書籍が詰まっているので、結構重い。確かに一箱を抱えるだけで限界だ。たくさんの段ボール箱があるなら何回かに分けて持って来ないととても一度では運べない。


 結局、碧ちゃんとその彼女は引っ越し業者のようにフロアを往復して貰って、結局、全ての段ボール箱を届けるのに、合計で自宅まで三往復もして貰った。本当にありがたかった。


 これはさすがに丁重にお礼をしないといけないと思い、全ての段ボール箱をリビングまで運んだ後に、何度も中でお茶でもどうですかと強引に誘ったのだが、その度に、碧ちゃんは「本当にすみません。今日は急ぎますのでお気遣いなく。」と若い彼女に目をやりながら、その言葉を繰り返した。


 確かに休日のドライブデートの最中、長く引き留めてお邪魔するのは悪いのかなとか、若い彼女も私相手だと少し話しづらいのかなと思い、最後に玄関先で本当に申し訳なかったが、今朝ケーキ屋さんで買ったお菓子の詰め合わせが入った紙袋を碧ちゃんの彼女に渡した。


 サクラ模様のデザインの可愛い紙袋が目に入ったとき、彼女の顔に笑みがこぼれたのを見て、このチョイスは正解だったかなと詩は思った。


 最後にエレベータホールからアパートの来客用の駐車場までお見送りに行き、あらためて二人に御礼の言葉を伝えた。碧ちゃんとその彼女は車に乗り込み、「また何かあれば、連絡してくださいね!」と車のウインドウ越しに言い残して、電気自動車の優しいモータ音を響かせながら、詩のアパートを後にした。


 アパートの前の歩道から手を振りながら、遠ざかる車の後ろ姿が見えなくなるまで見送った後、まずは、実家に荷物が届いた旨の御礼の電話を入れておこうと詩は思った。


 電話の呼び出し音が鳴るや否や、電話を待っていたかのように、いっちゃんの母親が電話口にすぐに出てきてくれた。書籍が届いたことの御礼と、碧ちゃんと彼女が大量の荷物を親切に運んでくれたことを報告すると、碧ちゃんからもつい先程、連絡があったことと、今まで私のことをとても心配してくれていたことを伝えてくれた。


 これまでいっちゃんがいる場だと、私との直接的なやり取りはなかったのだが、そんなに心配してくれていたことを聞いて正直嬉しかった。 結局、親戚にはなれなかったが、実家の両親を含めてこれからも身近な知り合いとして仲良くしていきたいと思った。


 今日は御礼の連絡だけで、手短に電話を切ろうとしたのだが、母親の方から碧ちゃんの彼女の話しをたくさん聞いてしまった。旅行先で知り合った彼女らしく、現在同棲中らしい。名前は莉子、呼び名はりっちゃんと言うらしい。これからもどこかで会うかも知れないので、覚えておこうと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ