段ボール箱
自宅に届いた段ボール箱は一箱だけだったが、どの本から送るのかは、ご両親に任せていたので、箱を開けるまでどんな本が入っているのかはわからなかった。カッターナイフで箱を封じていたベージュ色のガムテープを切り裂き、箱を開けると、平積みされた書籍が目に入った。
本のタイトルを見ると、世界の神話に関係する本だ。上にある本を取り出して、その下にある本のタイトルを確認すると、それも神話に関する書籍だった。
段ボール箱から本を取り出す最中に、茶室の図書館の本箱のことを思い浮かべた。これは、きっと書斎の入り口を入って右側にあった本箱の書籍だ。そのコーナーには、神話学研究所の参考資料が収められていた。
研究所の番号でいうと、神話学研究所は、FI/1に該当する研究所だ。このとき、ふと思った。研究所の番号まで知っているなんて、なんか私も研究所の一員みたいだなと詩は思った。変なことを言うようだが、いっちゃんに触れた気がして、少し嬉しい気分がした。
段ボール箱から、全ての本を取り出して、リビングの床に無造作に並べてみた。ギリシャ神話、ケルト神話、ゲルマン神話、北欧神話、ロシアの神話、中国の神話など、世界各国の神話が集められている。これは、日本の神話の部類なのだろうか、日本書紀もある。
いっちゃんがよく話してくれた星座の話しはギリシャ神話だったなと思い、その本を開くと各星座の起源の説明の箇所にたくさん下線が引かれていた。もちろん、日本語に翻訳されていたが、星座についての由来が掲載されていた。
きっとここから、私にいろいろと話してくれたんだなと思った。今でも覚えているのは、彼が書いてくれた『七日間物語』という短編のエッセイだ。社会人として、毎日の手洗いやうがいを欠かさず留意していたのにも関わらず、不覚にも法定の指定感染症にかかり、一週間自宅に隔離されたことがあった。彼はそのとき、私を励ますために毎日ロマンチックな星座の話しを書いてメールで送り続けてくれた。
隔離期間は七日間だったので、タイトルは七日間物語だった。隔離期間の初日に受信したスマホの画面に表示されたそのタイトルを見たときに、彼に見守られているようで嬉しかった。二人の星座の話しを中心に二日目から六日目までロマンチックな星空の話しだった。最後の七日目はMy sweet better halfのエッセイで締め括られていた。何度も聞いた話だが、きちんと文字にして貰うとより愛しさが募った。
隔離期間の終了後、再会したときに彼から貰った水色のバックにオリオン座のデザインの表紙付の『七日間物語』の印刷版は、今でも大切に自宅に保管している。詩ちゃんの性格って、星占いの星座の起源通りだよねという話をしてくれたことを今でもはっきりと覚えている。
おっといけない…。センチメンタルな気持ちに浸る前に、その本の近くにあったギリシャ・ローマ神話辞典というのを開いてみた。神話に辞典なんてあるんだと初めて知った。神話辞典には、それぞれの神話に出てくる神々の名前や用語などの説明が記載されていた。確かにこれがあると神話の登場人物がどういう存在なのかがよくわかる。
ギリシャ神話の時代から更に時代が遡り、太古の神話というのだろうか、エジプト神話、メソポタミア神話、シュメール神話というような高校時代に歴史で習った4大文明の時代の神話の本もあった。




