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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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茶室の中の図書館

 「わあ、こんなに!」

 彼の実家にある書斎の中で、詩は思わず声を上げた。和室の左右の壁一面の本棚に並べられた天井にまで届く高さの書籍の多さに圧倒されたのだ。ここは彼の書斎だ。デートはいつも外か私のアパートだったので、この実家の奥の部屋に来るのは初めてだった。


週末の今日、彼の実家に来たのは、先日、彼の両親が処分を考えているという彼の本を見てみたいと、私が母親に連絡したからだ。その電話の際に、彼の手紙に本のことが書いてあったことを伝えて、私の興味がある本がそこにあるかもしれないと伝えると、それは是非、詩ちゃんに見て頂きたいという話になり、会社がお休みの週末の午後、手土産を持参してこの実家に来ている。


 もちろん、婚約当初を始めとして何度か実家に来たことはあるが、いつもリビングで両親に挨拶をする程度だったので、この奥の書斎にまで入ったことはなかった。彼が実家で緊張する私に気を遣って、いつも両親への挨拶が終わると外に連れ出してくれていたからだ。


 あらためて彼の蔵書を確認すると、サイト上のファイルに記載された参考資料の数よりも本の数はかなり多いように思える。まるでここは小さな図書館のようだ。


 「ここは元々茶室だったのよ。そこを樹が改装して書斎にしたのよ。」と母親が説明してくれた。


 なるほど、だから入り口が少し狭くて、奥ゆかしい感じの和風の部屋なんだ。天井は木目が美しい木板で造られていて、木の香りがする。

 

 もう一度、部屋の様子を観察すると、入り口は茶室らしく、背の低いアーチ状の丸みのあるデザインになっている。その入り口から入って見わたせる左右の壁には、背の高い本箱が各壁面にそれぞれ2台づつ並べて設置されている。茶室の雰囲気に合わせた木目調の色合いに統一された左右合わせて合計4台の本箱は全て同じタイプのものだった。お洒落ないっちゃんらしいデザインだ。どの本箱も上部までぎっしりと書籍が収められている様子が、図書館のように感じさせる。


 『茶室の中の図書館』、心の中で、詩はそう名付けた。茶室らしく床が畳張りの不思議な雰囲気だが、なぜか気持ちが落ち着く。部屋の中央には通常のサイズの畳と異なり、一部だけ小さな正方形の畳が配置されている。その小さな畳の上部の天井には炉をかけるフックがあることから、この位置に茶室の囲炉裏があったことを想像させる。何とも和洋混合の創りになっていて、大正時代の洋館の部屋みたいだ。


 「私には分からない宇宙だの物理だの考古学だの難しい本ばかりだから、好きな本があれば持って帰ってね。」と母親が言ってくれた。


 「ありがとうございます。こんなにたくさんあるなんて、少し驚いています。」と詩は正直な気持ちを伝えた。


 「物持ちの良い子でね、本当に処分するのに困っていたから、今日はゆっくり見ていってくださいね。」と書斎に案内してくれた母親がそう告げて、部屋を去っていった。


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