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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第3章

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職場復帰

 「湖嶋さん、お帰りなさい。」会社の同僚が笑顔で歓迎してくれた。

 「休職中は皆さんに迷惑をかけて申し訳ありませんでした。本日から復帰いたしましたので、よろしくお願いいたします。」


 上司の松野さんは挨拶なんてしなくてもよいですよと言ってくれたのだが、私から申し出て、朝一番に職場の部署のメンバーの前で挨拶をした。私の都合で休んでしまったことへのせめてもの謝罪だ。


 長く休んでしまったこともあるけれど、周囲の気遣いを感じるところもあり、なんとなくばつが悪い。以前のように接して貰えるように、少し努力しないといけないと思った。


 午前中、使用していたパソコンを立ち上げてみたが、長く使用していなかったせいか、OSの更新などで手間取った。私を含めて、機器の方もリハビリが必要みたいだ。自宅を出るときに手首につけたフローラルな香りの香水がほのかに漂った。


 お昼になって、上司が早目に外にランチに行かないかと誘ってくれた。朝からの雨も止んでいたし、断る理由は何もなかった。休職中も松野さんは優しく対応してくれた。ずっと高齢の母と二人暮らしをしている社会経験が豊富な人で、人の気持ちがよくわかる上司だ。


 会社があるビルから少し歩いたところに、和食の定食屋さんがある。人気店のようで遅くなると行列が出来ることを知っていて、早い時間に誘ってくれたみたいだ。曇り空の下、街路樹のある歩道を抜けて、ビルの一階にあるお店の入口で2名様であることを告げて少したたずんでいると、やがて名前を呼ばれてお店の奥のテーブル席に案内された。

お店の中は入り口の佇まいから想像するよりも意外と広くて、数多くのサラリーマンとおぼしきお客さんが談笑していた。


 座席に案内してくれた若い女性の店員に、本日の日替わりの定食を聞くと、塩サバの焼き魚定食でお薦めですと言うので、二人ともそれを頼んだ。

 

 梅の花の図柄のお湯呑みにお茶を注ぎ合いながら、ここに来るのも本当に久しぶりですとか、午後からは雨降らないでしょうかなどと世間話をしていると、やがてその定食が運ばれてきた。


 目の前に置かれた和食器のお皿の上には、銀色の皮の焼き目が香ばしい塩サバが載っていた。手早く醤油を上から注いで、箸で上手にサバの白身をほぐして、その横に添えてある大根おろしに絡めながら、松野さんは本題を切り出した。


 「今日から復帰だけど、湖嶋さんはまだ無理する必要はないからね。お仕事の方は、しばらくは簡単な事務処理の方をお願いしようと思っているの。それから、様子を見ながら徐々に調整業務をお願いするつもりだけど、当面はそういうのでどうかな。」

 

 松野さんからお魚用の醤油の小瓶を受け取りながら、詩は答えた。

 「もちろんです。そんなに気を遣って頂いて本当に恐縮します。ただ、周りの人にこれ以上、迷惑をかけたくないので、何でもやらせてください。」

 

 きっと、人事の北川さんと連携して、私に配慮してくれている姿勢がありありと伝わった。こんな良い職場はない。みんなのためにも、早く元気になろうと本当に思った。


 お店の外に出ると、雲の間から青空がこちらを覗いていた。


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