美容院
「ずいぶんと髪伸びましたね。以前と同じくらいでいいですか?」ここは行きつけの美容院だ。しばらく、実家に帰っていたので、ここに来るのは久しぶりだ。というか、きちんとした美容院に来るのは何か月ぶりだろうか。
さすがに、このボサボサの髪で職場復帰はまずいと思い、会社への復帰を決めた後、美容院を予約した。だけど、先日、人事の方から連絡があり、明日は会社で復帰に向けた手続きを行うことになったので、予約していた日を少し早めて、今日の午前中に変更して貰った。
シャンプーチェアに座りながら、久しぶりに会う顔見知りの美容師さんに正面にあるミラー越しに挨拶をし、軽く世間話をした後、「いつも通りでよいですか?」と言われたので、少し考えてから、詩は新入社員の頃に気に入っていたセミロングの長さに髪の長さにして、軽くウェーブをかけて貰うように美容師さんにお願いをした。
髪を洗って貰ってパーマの液をつけて貰う間、お店にあったファッション雑誌を眺めてみた。今年流行りのお洒落アイテムの特集があり、可愛いバッグや靴の写真が並んでいたが、あまり興味は湧かなかった。
ただ、雑誌のある頁に掲載されていた紺色の生地に小さなドット柄の襟付きのシャツが、夜空に浮かぶ星々のように見えて、その写真が気になった。それは、彼がよく着ていたシャツの柄だった。
『リゲルが僕の星。』オリオン座を見上げながら話した彼の言葉が思い浮かんだ。そうだ、ベテルギウスがあるなら、次はリゲルだ。だって、あそこは、いっちゃんの世界だから。
そう、二つ目のファイルのパスワードの目途はついていた。家に帰ったら、早速、試してみよう。
参考: 第1章 彼氏




