薔薇島
しばらく、その詩を見つめて意味を読み取ろうとしたみたいだが、やがてこう呟いた。
「日本ではなく、外国の風景みたいね。ヨーロッパかしら。」
詩も感じている印象と同じで安心した。
詩は、今日一番言いたかったことを芽依ちゃんに切り出した。
「私ね、この間、いっちゃんが昔ドイツに行ったときに現地から送ってくれた写真を調べてみたの。」
何か覚悟を決めたような顔つきで詩が話しかけてきたので、芽依ちゃんも真剣な表情でこちらを見つめてきた。
「そしたら、気になる写真が出てきたの。」
詩は、その写真をテーブルの真ん中に置いた。
「わたし、この島にいる夢を見たことがあるの。」
「詩ちゃん…」
私が何か大事なことを言おうとしているのを、芽依ちゃんは察して私の言葉を待った。
「彼の写真のファイル名で判明したのだけど、この島の名前は…」
「島の名前は?」
まるで有名な映画のシーンのように、少し間をおいて詩は答えた。
「薔薇島。」
その瞬間、芽依ちゃんは、全てを理解したような顔で、私の心の奥底を覗くように私の瞳を見つめた。
「私、ここに行こうと思っているの。」
詩はその決意をこの日、芽依ちゃんに打ち明けた。
「青い薔薇のブローチ… このことだったんだね。」
「芽依ちゃん… ここで奇跡が起きるかな…」
芽依ちゃんは、写真を指差す詩の手を握って、優しくこう呟いた。
「絶対に起きるよ。神話を書ける人ってね、神様なんだよ。」
ポニーテールが芽衣ちゃんの背中で揺れていた。
「ありがとう。」
芽依ちゃんは、やっぱり使者だ。




