パリ旅行の提案
「詩ちゃん、パリに行こうよ!」
会社の休憩室で、お昼のランチの時間に、相変わらずショートヘアが似合う菜美ちゃんと話しをしていたところ、突然、海外旅行の話しになった。今日は白いカットソーの上に羽織った薄手のカーディガン姿が可愛い。
「え、パリ?」
先日、テーマパークに行ってとても楽しかった想い出の話しを二人でしていたところ、今度またどこに行こうという話になり、突然、海外旅行の話しになったのだ。
私は近場の国内の観光地を想定していたのだが、留学経験のある菜美ちゃんは外国に行きたい、行くならヨーロッパ、お洒落な街のパリがよいと言い出した。
「ねえ、夏休みを一緒に取って、一週間くらいでヨーロッパ旅行しない?」
私が戸惑っていると、菜美ちゃんがどんどん具体的な提案をしてきた。聞くところ、菜美ちゃんは昔からヨーロッパの音楽や芸術に興味があるようで、パリは行きたい都市の一つらしく、ルーブル美術館やベルサイユ宮殿はもちろんのこと、シャンゼリゼ通りのお洒落な街並みは憧れの場所のようだった。特にモネの絵画で有名なオランジュリー美術館の話しを熱く語って来た。
確かにこのところ、ずっと自宅に引き籠っているだけなので、海外旅行も良いかもしれない。ヨーロッパと言えば、いっちゃんが、昔、短期間だけど駐在していた場所だ。もしかしたら、真理のファイルの内容を読解するためのヒントがヨーロッパにある可能性もある。そもそも、Wahrheitのタイトルとか、どうしてドイツ語なのだろうと最初から疑問に思っていて、ドイツに何か真理の秘密が隠されているのかも知れないと、詩は感じているところもあった。
ただ、海外旅行となると、念のために通院していた心療内科の先生と会社の人事の北川さんに確認する必要はある。だけど、復帰後の体調はすこぶる良いので、多分、大丈夫だし、実家の両親も会社の同僚と旅行するのであれば反対することもないだろうと詩は思った。
そんなことを考えながら、菜美ちゃんが行きたい観光地の話しをするのを一通り聞いた後、詩は笑顔でこう答えた。
「そうだね。英語がペラペラな菜美ちゃんが行ってくれると心強いから、行ってみようかな。」
すると、菜美ちゃんが満面の笑みを浮かべて、右手をグーにして喜んでくれた。
「やった!では、決まりね。詩ちゃんと海外旅行なんて楽し過ぎる!では、具体的なプランを私の方で考えとくね。その前に、松野さんの許可を取っておかないとね。」
菜美ちゃんが予想した以上に喜んでくれて、詩はそれだけで幸せな気持ちになった。
こうして、詩は、夏休みに菜美ちゃんとパリに行くことになった。それまでに、真理のファイルをよく調べておこう。せっかくヨーロッパに行くのだから、その地にあるかもしれないヒントを見逃したくはない。
人生に無駄なことなんて一つもない。これも彼の口癖だった。菜美ちゃんがこのタイミングで海外旅行を提案してくれたのも、きっと何かの意味があるんだ。詩はそう思った。




