人生観
激動の週末を終えて、朝から慌ただしくメイクをし、いつもの地下鉄に乗って会社に向かう。週明けの大勢の通勤客と地下鉄の車内で揺られていると、車内の広告に自己啓発本の宣伝が掲載されているのが目に入った。開運に繋がる人生観とかキャッチーな言葉が書いてある。
人生観といえば、いっちゃんの語る人生観が印象的だった。それは、付き合ってから聞いたのではなく、大学時代から彼が広く友人達に公言していた言葉だった。当時は、若い頃からそんな哲学的なことをよく考えているなと感心したものだが、ずっと以前からこの世界の真理について追及していたことを知った今、その姿勢にあらためて納得した。
彼にとっては、人の価値とは自分で決めるものではなくて、他人の評価で決まるものらしい。そう考えると、人の価値とは結局、自分以外の他人をどれだけ幸福にしたかで評価されることになると彼は言う。そして、最終的な評価は生きている間ではなくて、この世を終えるときに決まるという。簡単にいうと、一生の内、他人からありがとうと感謝される回数が多かった人ほど、この世界に生きた価値が高くなるはずだと彼は言っていた。
後日、自分のことよりも他人の幸せを願う考え方を、利他と呼ぶということを会社役員の講話や宗教家の説話から知ったが、彼は誰からも教えられることもなく、自分自身でその考え方を若い頃から確立していた。ただ、彼が凄いのは、それを具体的に日常生活に活かすために体系化していた点だ。
その考え方に基づくと、彼は人の価値は4段階のレベルに分けられるという。まず、自分だけが幸せになりたい人、これは最低レベルのレベル1。多くの場合、この考え方の人は独りよがりで、他人を不幸にすることが多いので、他人にとってはプラスよりもマイナスになることが多いと彼は言っていた。
自分のエゴのために罪を犯すような人は論外として、一見、社会的には成功しているように思える人でも、誰からも信頼されていない人は、他人からの評価は低く、結局は不幸な人生を送ることになるという。
次のレベルは、自分だけでなく、家族を含めて幸せにしたいと考える人だと彼はいう。そして、大抵の人はこのレベル2の人だと彼はいう。例えば、楽な仕事をして高い給料が欲しいだけの人は、レベル2の人だそうだ。残業もしないで早く家に帰りたいというのは、人として当然の欲求で、別にそれが悪いという訳ではない。それが、家族の幸せのためだと思って頑張っている人は、その家族にとってはとても素敵な人だ。
ただ、社会的に高く評価されている人は、自分の家族だけでなく、所属する組織などを通じてより多くの社会の人々を幸せにしたいと考えていると彼はいう。そして、それを実践している人はその上のレベル3になるらしい。例えば、会社の仕事を通じて社会の人を幸せする人、病院で患者の命を救う医者、音楽を通じて多くの人を幸せにするミュージシャンなどは、レベル3に該当するらしい。家族も社会の人も幸せにしているので、その価値は高いという。
最後にこの世界の中で、人の価値として最高の段階のレベル4に位置づけられる人は、その考え方を適用して国内だけではなく、世界中の人々を幸せにしたいと考え、それを実行している人だと彼はいう。世界の人々に豊かな商品を提供するために昼夜働いている人達や、新たな知見を提供する著名な科学者は、このレベルの人達らしい。
そう言えば、彼が多数の国の言語を勉強していた理由も、将来、世界の人々を幸せにしたいからだと言っていた。真理の追及を始めた理由も、きっとその人生観に起因しているのかなと、今更ながらに感慨深く、彼の気持ちを察した。




