文書の体系
まずは、茶室の図書館にあった膨大な書籍を纏めた資料が存在していて、その資料内容から真理に関する部分をレポートとして纏めたものが、この研究所のレポート集のファイル、Bericht für die Wahrheit、そして最終的にそのレポートからこの世界の成り立ちについて結論を導き出した文書がWahrheit、真理のファイルなんだ。
きっと、いっちゃんが膨大な資料を纏めていた意味は、世界の真理を追究するためだったんだ。世の中にある全ての知識を収集し、この世界を支配している真理を追究していたんだ。その集大成がきっとこの真理の文書だ。
ジグゾーパズルでいうと、レポートは真理の風景をある分野で切り取ったパズルのピースで、それらのピースを組み立てて真理の全体像を明らかにしたものがきっとこの真理のファイル、Wahrheitなんだ。
だけど何のためにだろう?
このとき、メッセージの言葉を想い出した。
『僕は来世もずっと詩ちゃんと一緒にいることが出来る方法を発見しました。それは、この世界の真理を知ったものだけが使える方法です。』
彼は、私とずっと一緒にいるために真理を追究していたんだ。そして、彼は遂にその方法を見つけたんだ。このファイルは、彼が遺したその記録だ。全ての知識の集大成だから少し読んだだけでは俄かには理解できないが、時間をかけて彼が見つけた真理の内容を絶対に知りたいと、詩は思った。
芽依ちゃんが言ってくれたように、いっちゃんは一世一代の魔法でこの世界に生き返ろうとしているんだ。そう信じたかった。そして、その方法を記述した秘密の文書がこのファイルだ。そう思うと、凄いものを手にしていることをあらためて実感した。
これまでも、古都にある実家から大量の書籍を自宅に取り寄せて毎日、調査分析に明け暮れた日々だった。それがまだ続くのかという気分になり、普通の人なら憂鬱になるところだが、詩にとっては愛しい彼に出会える秘密の方法を知るという前向きな気持ちの方がはるかに上回っていた。
そう、本当の幸せって、手を伸ばす人にしかつかめない。
精一杯にこの手を伸ばそう。
それと、彼が教えてくれた私の名前はこうだ。
『うずらの雛がパンを食べてワシになるみたいで可愛いね』
そう、私は連れ去られたいっちゃんをワシになってゼウスから引き戻すための役割を担う存在なんだ。だから、いっちゃんは私にこの貴重な資料を託したんだ。絶対にそうだ、私はそう信じている。




