出歯亀
呼吸の曇りを今眺めている
向こう側のあなたは知らない
僕の眼がただの虚空だってことを
蛍光灯の眩しい白が
もたらしている
カーテンの隙間から零れた
あなたの生活の残り香
朝のトーストは焦げついて
夜のシーツは皺くちゃで
それだけの情報で
僕の頭は満員電車
あなたは僕の知らない誰かと
笑い合ってキスをして
その度に僕の心臓が
鉄の棒で叩かれるような音を立てる
あなたの部屋は秘密箱だ
僕はただの観客で
入場料を払わずにきた罰当たり
でも終演までは見れそうにない
いつの間にか
遠いサイレンが心を切り裂いていく
僕の指先は震えっぱなしだ
僕があなたを好きだったか
それともただの記録をつけるためか
何をどうしたいのか自分でも分からない