説教後の吊り下げ
「てめぇ……留年させてやろうかぁっ!!」
「上等だテメェっ!! んならもう一発ぶん殴るから覚悟しろ!?」
これは何だ?
休日登校を宣言され、教室の扉を開けて大牙、疹、女生徒2人は固まった。
生徒と校長がマジ喧嘩している。
儂の机に脚を乗せて堂々騒ぎ立てている。
先に動いたのは金髪の女生徒だった。それに釣られたように疹も動き出す。左足で踏み込むと、右拳を力強く振りかぶり……蒼井と校長をぶん殴った。
それはそれは頬に食い込む程の強力な一撃で。
「痛ったぁ!?」/「痛てぇよ!!」
地面に尻餅をつきながらも、彼らは涙目で訴えたと言う。
―――
「貴様らは学校を何だと思っておる!? まず喧嘩は認めよう、ぶつかり合い絆を深めるのは良い!
しかしだな、他者の机の上に脚を乗せるでない! 他者に迷惑をかけるのであらば喧嘩は認めん!!」
まさか正座で生徒から説教を喰らう羽目になるとは……
校長の心境だ。如何に彼のような駄目人間でも情けなさを感じずには居られない。
「どうしたんですか?」
そんな教室にまた1人、登校者が姿を表す。その丁寧な口調は如何に名門、私立江木常高等学校とは言え1人しか居ない。
「ん? おはよ、華蓮」
「……馬鹿が説教されてるだけ」
そう、白鳳華蓮だ。ひょこっと教室に首だけを出すと……
――見なかったことにしよう
なんか記憶に残しておくと呪われてしまいそうな光景が広がっていた。
慌てて視界を自身の友人に戻す。先程蒼井を殴りつけた長身で金髪の女生徒――妃鞍 麗歌 (れいか)、彼女も蒼井と同じで元はかなりの悪らしい。
満月の晩には人を殺める姿が目撃されたとか、根も葉もない噂が広がるくらいに……。
今もその面影は残っており、サイズより小さな学生服は僅かだがヘソを覗かせており、規定以上に短いミニスカートもまたその象徴と化している。
そしてもう1人、男だからか短い毒舌だけで蒼井と校長の有り様を語った無口で眼鏡を掛けている少女は、これまた何で麗歌などと一緒にいるのか分からないくらいの秀才。
学年トップの成績で有名な四弼瞳。
ともあれ、麗歌の影響か今年度から髪の毛の色を水色に染めてたりする……が、その頭が良いのに少し悪いというギャップに魅せられる男子が増殖、失恋者の山が出来上がったとか。
「そ、そうなんですか」
一方で華蓮は苦笑いだ。確かに説教を受けているのは確かだが、まさか馬鹿と罵倒され、尚且つそれが校長なのだからやはり話しは別だ。
引きつった笑顔で応対するしかない。
「んで、全員そろったか?」
華蓮の笑みが更に引きつる。まさかと華蓮の読み通り。校長、説教が終わったのに立ち直っていない。
顔が暗い、眼が死んでいる。
「で? 何でアタシ達6人だけを呼んだのさ 意味が分かんないんだけど?」
そんな満身創痍な校長に追い討ちを掛けるが如く、麗歌はズバッと疑問を投げかける、それも余計に一言プラスして。
「よくぞ聞いたな? 学年一のスタイルと噂の妃鞍君」
ヤバい……校長の眼がイッてる。というか光っている。
これは、校長が元気になっているのだろうか? 少なくともテンションが上がってきているのは確かな様だが
「そう! プールの清掃だ!! そして清掃後は君達女子諸君がプールの程度を確かめたまえよ!!
俺はこれで盗撮する!!」
そう高らかに叫び校長はカメラを取り出す。
馬鹿だ、とその場にいる全員が溜め息を吐き……結果は勿論袋叩き。流石に華蓮と瞳は参加しなかったが、それでも酷いことになったのは言うまでもない。
その後校舎の真ん中に取り付けられた巨大な時計の針にロープで吊り下げられたことも……。