遠距離覗き
授業中に蒼井が悩んみ悩んで、考えた作戦はこうだ。残念なことに3人とも正におしとやかな女子、不良や見るからに今時を意識した女とは違い、スカートも長い方であり、覗くなどの確認は極めて困難。だが、それを蒼井は坂手に取らせて貰うことにした。
まず、対象を上手く廊下のとあるポイントにおびき寄せる。ポイントの壁にワザと突起物(今回は木の枝を使用)を取り付けておく。後は対象のスカートが突起物に引っかかり捲れるのを待つだけ。全員のほほんとした性格の女子だ。スカートが引っかかった段階では誰も気づかない。きっとそのまま歩いて自らスカートを捲ってくれる筈だ。
後は望遠鏡を使いそれを校舎の対岸から覗くだけ。“エの字校舎”に感謝しても感謝しきれない。
「この作戦は完璧だ。スカートが捲れて何故恥ずかしいか、それは女性がパンツを誰かに見られてしまうからにある筈。なら誰もいない廊下で捲れてしまうだけならただのアクシデント、つまり俺が自己申告や他言をしない限りは誰にも見られていないのでちょっとした失敗として向こうも考えるに決まっている。
そして、覗く方の俺も突起物に引っかかった時点で気付くべきのものを気付かずに、彼女達が自ら歩いてスカートを捲るため“捲っている”という罪悪感を半減させることが可能になる。つまり、そう! 完璧だ!!」
最低。
不良がまともに見えるほどだ。
本人は必死に自分を納得させているが、要はバレないように遠くから望遠鏡で下着を、いや、下着の中身すらも覗こうというのだ。将来こういう人間が犯罪を犯すのだ。というかこれから犯すのだ。
最初のターゲット、石弓が廊下に接近してきた。
「ごめんな、石弓……」
呟くと望遠鏡のレンズを覗き込む。それなりに高価な代物であり、校舎間など簡単に覗ける。澄んで見える。綺麗な脚だ、スカートから少し覗く脚についつい目線が行ってしまう。
「と、そろそろか」
後2歩、1歩、突起物へと石弓が近づく。そして……口を大きく開けた状態でスカートを引っ張りパニックになる石弓。
しかし、そのスカートの中身は
「穿いてるな」
可愛らしいことには変わりないがイチゴ柄の、更に可愛らしいものだ。
鼻の中が血の、鉄の匂いで満たされていくのを蒼井は感じた。覚悟はしていたが、刺激は強すぎる。
そして、石弓にもだ。木の枝にスカート引っ掛けたままでまだ暴れ続けている。
「ちょ! やべぇな、パニクり過ぎだろ石弓! あんなに騒いでたら人が来ちまう」
望遠鏡越しにヤバいと呟くが、助ける手段は一切ない。走っていってもいいが、スカートが捲れた状態を誰かに見られることがそもそもの失敗なのだ。いくら自分でも助けにいくのはマズい。
「あ、いや、助かった。取れたぞ! 良かった……」
危なかったと胸をなで下ろすが、そもそもの原因が蒼井だ。
一応それなりの人格者である蒼井も、自己嫌悪で自らに手錠をかけたくなっている。しかしそれを堪え次は根宮に同じトラップを仕掛けてみる。
「これまた可愛らしい」
しかし、やはりスカートの中にはパンツがあった。今度は黒猫のプリントが入ったパンツだ。色気というよりか可愛らしさしか感じないパンツだというのに、蒼井の鼻のダメージは限界だ。今し方誰かを殺したのではないのかというほどに血まみれである。
しかし、こうなると怪しいのは彼女しかいない……。
今、その少女が1歩1歩トラップへと歩を進める。
「来たな、白鳳!!」