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無意識は危険

席に着く。

授業を受ける。

休み時間に友人たちとの談笑。

ごくごく普通の学生の1日だ。

蒼井は確かに、超能力を抜きにすればその生活に当てはまる一般の人間だ。そこにつけ足すとすれば、少し喧嘩が強い、その程度。故に当てはまらない理由というものもなく、蒼井は超能力に目覚めようが黒桜を精製しようが、やはり学校にきて授業は受けるし、休み時間は様々な友人と話に花を咲かせている。

しかし、それでも蒼井の中に変化がなかったわけではない。恋有夜との出逢いから、彼の中には困惑が生まれている。


「あ~……暇」


授業の最中、おもむろにノートに文字を書き込んでいた右手を止めると蒼井は呟き、その手に収まっていたシャープペンシルを指先でくるくると回し始める。

今では簡単に出来るこの――「ペン回し」も、初めてみた時はどうやっているものかと考え込んでみたものだ。最も今回のことの方が深く思考しなければならないことなのだが。


先日、それは起こった。好みのタイプの番組をテレビで放送していたもので、蒼井は食い入るようにその番組に見入ってしまった。片手には缶コーヒー、プルタブを開けて少量ずつ喉に流し込みながら見ていたのだが、ふと何か食べるものが欲しくなってしまった。


『あ、くそ、甘いものが欲しいな。でもテレビの前を離れたくねぇ』


誰にでもあることだろう。我慢して取りに行くか、コマーシャルまで待つか、それは各々好みがあるだろうが、蒼井は後者にすることとし、テレビから離れた位置に設置された冷蔵庫の中身を思い出していた。


『やっぱり、昨日買ったモンブランあたりかな』


コンビニスイーツ、などと呼ばれるコンビニで販売しているケーキのうち、昨日購入したモンブランを食べることに決めた蒼井は、テレビ番組がコマーシャルに入るのを待ちながらも、どこかでコマーシャルに入らないで欲しいと、テレビ番組を楽しんでいた。


『こりゃまた、面白いな。なんて番組だ?』


そして気がつけば、蒼井はテレビを見ながらモンブランを口に運んでいた。


『っ!?』


初めは違和感すら感じなかったが、番組がコマーシャルに入った途端、驚きが一気に押し寄せた。自分はこの時間にモンブランを取りに行こうと決めていた筈なのに、何故口の中にはもう既にモンブランの味の余韻があるのだろうか? 勿論テレビと自分の間に設置されたテーブルの上には食べかけのモンブランがある。

そう、蒼井は自分のモンブランを自分の意思で胃に収めていっているのだ。それは間違いない。本人も自信を持ってそれは言えるだろう。


『あれ、俺はいつモンブランを持ってきたんだ?』


その時、部屋の奥から恋有夜がふと現れた。蒼井はすぐさまモンブランのことについて「冷蔵庫を開ける音はしなかったか」などの真実に迫る質問をしようとした。



『蒼井、超能力を使い冷蔵庫のモンブランを手元に運んだか。やはりお前には才能がある』


恋有夜はその疑問が一瞬でサッパリするような言葉を投げかけてくれた。


『無意識だ』と答えたらガッカリされてしまったが。



と、ここまでが蒼井の困惑の原因である。


無意識のうちに欲しいと思ったものを手に入れている。非超能力者の前で超能力を使うということすら、騒ぎになるから避けたいというのに、万が一欲しいと思った高価なアクセサリーなどがポケットに収まっていたら……それこそ自分は万引き、いや大物狙いの世界一謎めいた手口のカリスマ万引き犯になってしまう。

(いやいや、それよりか危惧しなきゃならねぇのはアレだ! もし、“好き”だとか“可愛い”だとか思った女の何かを取り寄せたりしたら……


『うわ~、花咲が愛子のハンカチ盗んでる~』


『きも~い』


うぉぉ嫌だ! そんな展開だけは嫌だぁ! 変態には成り下がりたくねぇ!!)


今が授業中だということすら忘れて悶える蒼井、クラス中から訝しげな視線を集めているが本人はきっと気付いてすらいないのだろう。

と、その時蒼井の机の中でパサッと布のようなものが落ちる音が聞こえた。


(え? まさか、本当に……本当にハンカチ?)


考えていただけにあり得そうで困った蒼井は、机からその音の現況を出さずに、中を覗くことにした。



そして



そこにあったものとは……




(まさかのパンツぅぅぅ!?)



純情で可愛らしい、白色の女性ものパンツだった。

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