表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/43

考察と疑問 ~パロディ~

更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ありません。今週からはまた週1の更新に戻ります!

「おはようございます」


「ああ、おはよう」


桔梗の一件。それからは平和な日常が続いていた。

あの後、華蓮に抱き締められた蒼井はワンワン泣いた。混乱を全て吐き出すように思い切り泣きじゃくった。そして、それを優しく抱きしめ続けた華蓮。

今までの堅い絆に加え、この結びつき。もはや2人の関係には恋有夜すら入り込む余地がなくなっていた。 それこそ、登校時も2人の後ろを大牙と共に歩くようになるほどまで。


「毎朝毎朝、話題が尽きないものなのか? あの2人は」


毎朝、いや、毎日話し込んでいる蒼井と華蓮の背中を細目で見据えて、恋有夜は溜め息を吐きながら考察を述べる。

その発言に、妬みなどの感情は一切含まれていないのだが、毎朝毎朝同じ相手と、それも2人だけで会話をするというのは話題に困りそうだと心から思う。

が、その隣を歩く大牙はその発言こそ不思議そうに、となりを歩く女性に視線をやる。これは恋有夜もそうなれば分かることだが、案外話題というのは自然と見つかるものであり、敢えてこの疑問を持つ理由を述べれば混乱に等しい。 日本人なら食事の際、ほぼ確実に箸を使う。言わば食事の必需品だ。目の前にすれば普通に“持ち方”を実行できる。しかし、例えばその“持ち方”を入浴中に再現できるだろうか? 大半の人間は難しがると思う。何故ならそれは感覚で行うことであり、理屈や技術ではない。握るものがあれば器用に“持てる”が何もなければ出来ない。感覚でやるからいざ理屈で通そうとすると混乱する。いや、そもそも理屈臭くする辺りでもうすでに混乱しているのかもしれない。だが、大牙はそんなことを不思議そうにしているのではない。恋有夜が混乱しているにしろ、理屈を通したい好奇心旺盛な同級生であるにしろ、「会話の話題に困らないのか?」が自分の命を危険に晒すわけではないし、誰かが迷惑や不利益を被るわけでもないからだ。

よって大牙の疑問の視点は恋有夜の別のヶ所に向く。

「会話の内容なんて次第に見つかるもんっスよ。現に今だってこうして一切関係のなかった恋有夜さんと俺の間に会話の種があるじゃないスか」


そう、普通なら会話の話題に詰まるなんてことを友人に、まして同居するような仲の相手に対して考えない。0は何をかけても0だが会話は0から発展する。

確かに、親しくない人間や、階級や身分が上の人間と話すには少しだけ話題で不安がることもあるかもしれないが、だからといって考えないのが人間だ。会話なんて基本は感覚なのだ。

それをわざわざ疑問がるという恋有夜そのものが、大牙には不思議でたまらない。人間が自然と考えないことを自然と考える、恋有夜はまるで


(人間じゃないみたいだ)


異国の文化を不思議がるのは当たり前。それは異なっているからだ。

では、人間そのものの文化に等しい会話を不思議がるのが当たり前なのは……


「どうしたんだ? 大牙、私の顔に何かついてるのか」


考え込むうちに、かなり長時間に渡り恋有夜の顔を凝視してしまったようだ。声をかけられる。


「あ~、いや、いつも通りの綺麗で整ったお顔立ちっスよ」


大牙は一度言葉に詰まった。明らかに人間に対して、「人間じゃないですよね?」なんて聞いたら失礼極まりない。勿論、先ほどの疑問は胸の奥に閉じ込める。 そう、恋有夜は大牙の中では初めて、そんな疑問を唱えてしまっただけ。少し変わってるなと、大牙が初めて思った相手のだけ……


(たぶん、いや、きっとね)

「てか、冷静に考えたら蒼井の知り合いに変な奴がいても当然っちゃ当然なんだわな」


「聞こえているぞ? 大牙」


「うお、すいませんっ!」


平和な2人の後ろ約3メートルで、朝から無駄に脳みそを回転させた人数……男1人女1人 計2人。 結果:無駄

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ