超能力者
「そうだな、どこから説明したものか」
対面して座る蒼井と恋有夜。う~んと唸り、何から入っていいのか悩む辺り、本当に説明することは多いのだろう。
ならば、こちらから質問してやるのが一番なのか。いいや、それでペースを乱されてしまう者も多い。 蒼井はそんな恋有夜を見つめ、次に自分が何をしたらいいのか、口を開いては閉じを繰り返す。
「そうだな、まずは超能力について簡単な説明をしよう。
まず、超能力はよくテレビなんかで聞くものと同じだと思って問題ないな」
「それじゃーー」
「いや、だからと言って別にテレビに出ているのが本物の超能力者というわけではない」
蒼井は胸をなで下ろした。別にそこまで窮地に立たされる理由でもないが、彼は幼少の頃よりテレビに登場する超能力者を信じてはいない。
否定して生きてきた。それが本物だったのだとしたら、それはとんでもなく失礼なことをしたということだ。故に、この結果に蒼井は安堵したのだ。
「だがヤツら、捨てたものではないぞ。
人間皆、超能力者の資質は持っている。超能力の基礎、“テレポート”“サイコキネシス”この様な言葉を超能力者でない者達が知っているということは、イコール覚醒し始めているということだからな」
ん? ならばと蒼井は思考を走らせる。人間全員が超能力者になる資質を持っている――。だとすれば
「間もなく人間全員、超能力者として開花――」
「するわけないだろう」
恥ずかしい。これは本当に恥ずかしい。今回2回目の割り込み、そして推測の大ハズレ。顔が熱くなるのが分かる。これが俗にいう「穴があったら入りたい」だろう。
「説明を続けるぞ。
まあまず、超能力の基礎なんかは大分前から存在している。蒼井の仮説が正しければ、もう数十年前から人間全員が超能力者でなければおかしいな?」
「……はい」
笑顔で、恐らくは蒼井の心の傷を最低限に抑えようとしてくれたのだろう、恋有夜の行為は、正直蒼井にダメージを与えた。が、それは小さなことだ。
改めて説明を聞く態勢をとると、恋有夜の話に耳を傾ける。
「そして、超能力はその基礎から発展する。テレポートならば、ただ単に対象を別の場所に移動するのが基礎。次元を別次元に飛ばし、もともとの次元と別次元を取り替えてしまうのが発展だな」
急に蒼井の目が輝いたが、それはきっと彼が純粋無垢な少年なんだろう。
「そして、超能力の最大の特徴は超能力者にしか見えない、ということだ。
つまり、お前がマンションから飛び降りたとき――アレは強化型の超能力だが、蒼い雷を纏っただろう? あれは野次馬に見えていない」
「それってつまり、俺、“生身でマンションから飛び降りた人”ってことになってるのか?」
「そうだ」
「はあ!?」
これには困った。最近どうりで、医者からの健康診断云々の通知が多量に届く筈だ。
「絶好の研究対象だからな」
「笑顔で言うな!!」
そして、ふと気が付いた。
いつもいる、彼女がいない。
「アイツは!?」
「アイツ?」
「知らないうちにココに住み着いた女の子だよ、そろそろ腹が減って泣き出……」
「あれは私だ」
……妙に納得こそしたが、決してそれで解決して良いとは思えない。そんな夜を蒼井は過ごすこととなった。
つい、またもや執筆が間に合いませんでした。
すいません。
これからもこの様な事態に陥ってしまうことが多々あると思いますが、最大限努力して行こうと思いますので、どうか宜しくお願い致します。