気持ちの波
活動報告の通り期末考査で更新出来ませんでした。
すいませんm(_ _)m
あれから、色々有りすぎた。
敗北、足掻き、涙。経過した時間こそ少ないが、蒼井の心はこの数時間で大きく変動していた。
そして、なによりも蒼井は今までワクワクしていた。彼だってまだ高校生、ヒーローに憧れる。悪の軍団が現れ、攫われたヒロインを助けにビルの上からマントをつけて飛び降りる。……ここまで深いと、今時憧れるのは蒼井くらいだが、それでも彼はヒーローが好きだ。故に、特異な集団は、疑いながらも入る気があった。
それが正義の組織なら、彼には損がないのだから。
だが、その夢は儚く崩れた。人に夢と書いて儚い、よく言うが実際は人が壊すからこそ儚いのだろう。正に痛感していた。
「少し、休んだほうがいいですね」
下唇を力強く噛みすぎたのか、生暖かく、鉄臭いものが顎を伝っている。
シャルデンが自らの白いハンカチを自分なんかの為に使っていることに気が付くのは、その血の存在を認知した直後だった。
「この程度の傷でハンカチ駄目にしてんじゃねえよ」
驚くほど雑な、ただの暴言を吐き出していた。
――イヤナヤツダ
ヤツアタリダ
目を見開いて、立ち上がり記憶を頼りに出口を目指した。
「迷い子、羊のような少年」
蒼井の去った病室で、シャルデンは小さく呟いた。
―――
自宅の扉の蝶番、これを開く音がこんなにも情けなく、こんなに重々しく聞けたのは初めてだ。
「おかえり」
少女が出迎えてくる。彼女は決まって、脚に抱きついてくるので、扉を開ける前から、また暴言を吐いてしまわないか心配だったが、そんな衝撃はいつになっても訪れない。
ホッとしつつも、何があったか確認するため、俯いていた顔を上げると……
「おま……」
「ん?」
目の前の少女は、まだ少女と形容していい年齢。確かにそうではあったが、蒼井はショックを隠せない。
「久しいな――蒼井」
美しく長い脚、豊満な胸、整った顔立ち。見覚えがある――――恋有夜が、そこに立っていた。
―――
「ふむ、なるほどな」
蒼井の様子を疑問に思った恋有夜にはかなわなかった、まさか今度はここまで素直になってしまうのかと、蒼井は自分自身が分からなくなった。
「アーシアか、しかし君は超能力を使わずして負けたのだろう?」
「ん? まだそんなこと話してないのによく分かったな」
「当たり前だ、君の超能力はSランクものだからな。アーシアの下っ端など、片手で捻り潰せる実力だ」
どうやら、自分の気持ちが軽いのではなく、恋有夜が自分をプラス思考にしてくれるらしい。
口元を吊り上げる蒼井であるが、しかし彼も問わなければならない。
「教えてくれよ、超能力ってもんと、お前が一体なんなのかを」
今度は恋有夜が目を見開き、すぐに俯いた。危うく「無理にとは言わない」などと口をついて出そうになったが、これは蒼井の将来を大きく変えるかもしれないことについての質問だ。
そう簡単に逃がしてやることは出来ない。
「聞きたいか?」
「ああ」
「なら、始める。後悔はしないだろうが、したとしても責任は負わんぞ?」
今、恋有夜が口を開く。ここからが、彼の物語の本番だった。