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青色ノ雷覚醒(めざ)め

最近は更新速度が遅くて本当に申し訳ありません。

そして、地震の被災者様には心よりお悔やみ申し上げます。

いざ火災現場についてみるとやはり圧倒される。

7階建てのマンションの5、6、7階。ここまで燃え広がると厄介この上ない。いつもは、一軒家などの火災なのでバケツに水を汲み上げ消化を手伝うなど出来るが、今回は違う。そんな消化活動も出来ないし、何より……


「子供が2人、取り残されているな」


恋有夜と手を繋いでいる、という事実。それがなんとも嬉しいようで、苦しいようで、蒼井の脳みそに甘味な感触を伝えてくれる。


いや……待てよ?


「今、何て言った?」


不思議な浮遊感を味わって、手と手で繋がる体温を味わうなんてしている場合ではないと、蒼井は大きく目を見開いた。

中で黒色の眼が大きく震える。怯える。自分に害のない、見ず知らずの子供の為に揺れる。


「ちょうど7階の、一番右辺りか……子供の気配を2つほど感じる」


周囲を見回す。母親が嘆き散らし、父親が怒鳴り散らす。恋有夜の言っていることが事実と告げる。

なんで子供が逃げ遅れたか、そんなことを考える前に走り出す蒼井の身体だったが襟を掴まれたのでは見事に転けるしかあるまい。


「待て、燃えやすい学ランを身に纏い、水も被らずにこのマンションを登りきるつもりか? 不可能だろう、お前が燃え尽きるぞ」


襟を掴んだのは恋有夜だった。


「心配してくれるのかい?」


「勿論」


「悪いけど燃え尽きるの上等」


引きつった笑みを浮かべたまま、花咲蒼井は風の様に駆け出した。


―――


「ちっ」


5階まで登ってはみたがやはり火の廻りは速い。激しい火の海。確かに燃えやすい学ランを身に纏っていては突破が可能とはとても思えない。

こうなれば、腕に重度の火傷を負おうとも学ランを脱いで、シャツ一枚で突破するしか……

一気に駆け抜けようとクラウチングスタートの構えを行い、駆け出した瞬間だった。


「両手が大火傷して、動かせなくなって、どうやって子供を連れて降りてくる?」


またもや襟を掴まれた。やったのは恋有夜だ。


「じゃあ」


「いいから学ランを着ろ」


どうするんだと繋げる前に、恋有夜から学ランを受け取り、素直に袖を通す。

すると、恋有夜は徐に自分の胸へと蒼井の手を引っ張った。


「え?」


「我が主、花咲蒼井の名の下に我誓う。

その心、太陽の如き明るさで人々を助け、その道中に必要となる刃、我が化す。

主の力として、我本来の姿“黒桜”を花咲蒼井に授ける」


突如として発光した自身の身体に、戸惑いを隠せないのは蒼井本人だ。

目を刺すようでいて、それでいて温かい。そんな光の中で、何かが自分の内の内で書き換えられる感触に戸惑って――――覚醒(めざ)めた。


凄まじいスピードで自分の全てを理解して、上へと飛んだ。

黒色の革靴から青い雷が瞬いて、それに包まれたと思えば7階の廊下の下、ぽっかりと開いた穴から飛び出していた。


床を2枚、痛みも感じずぶち破り、直ぐさま部屋の扉を蹴り破る。扉の直ぐ向こうに気配はない為、思い切り。

案の定、凄まじい勢いで扉は奥へと吹き飛んでいった。


「助けにきたぞ?」


優しく微笑むと、子供を2人抱えて、7階から飛び降りた。再び電気に姿を変えて。

着地した蒼井は初めて気付く、自分のやったことの“異形さ”を。


「な、んなんだよこいつぁ……」


恋有夜のいなくなった夜空の下で、未だ手に青色の雷を立ち上らせて、蒼井はただただ震えていた。

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