放課後ティータイム
もう放置して約3ヶ月……大変申し訳ございませんでした。
これからはもう少しペースを上げていくつもりですので、どうか長い目で見てやって下さい。
あれからも、立ち直った様で引っかかる日々は続いた。
転校生の恋有夜ともある程度打ち解けて数週間経つ。
ザラつく汗の感覚は、依然として彼を蝕み苦しめた。
「慣れたくもないってのに」
そして、一番の恐怖は“慣れ”にあった。 ザラつく嫌な汗に、恐怖とは別の意味で恐ろしさを感じてしまう。
いつも、慣れを実感した後に脚がふるえる。 だんだんと、自分でもおかしな程に嫌なモノを好む節が見られてくる。
こうなると蒼井もヤケになりつつ……好むのなら、より一層それを吸い尽くそうともがき始める。
本日も恋有夜を放課後ティータイムに誘っている。最近の蒼井はそれに、尋常じゃないほどの依存をしていた。
彼女を誘う度に、華蓮は楽しくなさそうな顔でこちらを見つめるが、蒼井も蒼井でそれを無視する。
別に華蓮が嫌いなわけでも何でもない。
恋有夜と一緒に何かを見つけたいと言う気持ちが、華蓮の拗ねた表情に対する同情を勝ってしまっているだけだ。
だが、これが恋かと言えばそれも違う。
不思議な感覚が彼の中を渦巻いて、喫茶店のコーヒーを喉へと一気に運ばせる。
「熱っ!」
「当たり前だろ、先程来たばかりなんだ。 冷めるまで待て」
考えごとをしていた為か、それとも普段からの自覚が足りないのか。
喉を焦がすその感触に支配され、思考が切断されてしまった。
やはり彼女といると不思議だ。
こんな、どうでも良い失敗にさえ深い思考が走っていく。
好きなのか、嫌いなのか……どうであれ蒼井の眼の中には、今は恋有夜の姿しかないようで
「熱っ!」
「何をやっているんだ」
もう一度、喉を焼き付けた。
―――
「はぁ……」
自宅の机の上、思い出の写真を眺めながら大きく溜め息を吐く。
なんでだろう……と、呟こうとする口を何度も閉じて、必死で言葉を飲み込み続ける。
かなり前から、この少女――白鳳華蓮は蒼井のことを好いていた。
それが、今では告白もしていないのに失恋気分。
泣き崩れたくて仕方がないが、自分の勝手な想像で蒼井を目の敵にするのは、やはり想い人としては気が引けてしまい、グッと涙を堪え続ける。
こんな放課後が、後何回続くのだろうか……
―――
「さてと、会計会計」
一方で、そんな華蓮の気持ちを知りもせず、蒼井は喫茶店のレジでさっさと会計を済ませて、恋有夜と共に長い帰路へと付く。
「お前は私ばかりを茶に誘うな」
「な、何か問題が?」
無意識にやっていることでも、不意を付かれれば同様してしまうのに、意識していては尚更だ。
背筋をピンと伸ばして、ぎこちなく聞き返す。
「いや、正常な証拠だろう。……なんせ私は――」
恋有夜が何かを言いかけたその時だった。
近くのビルから火が上っている。
火事だ。
面倒くさいが自分には力が多少ある。仕方なく、火災現場に足を運ぼうとした蒼井の腕を
「早く行くぞ」
恋有夜は強く引っ張った。